お酒を飲む人には、甘党は少ない、という印象を持っているのは私だけでしょうか。ところが、脳の中では同じような反応が起こっているようです。
これまでに行われてきた複数の調査で、甘いものとアルコール依存には関連があることが報告されていました。甘いものに反応する脳のエリアは、お酒や薬物に反応するときと似通った神経の伝達経路を使うことを、画像診断で科学的に検証した結果、共通して脳の眼窩前頭領域が関わっていることが裏付けられました。
例えば、動物を使った実験ではこんな報告があります。アルコールを好むように飼育された動物では、そうでない動物に比べて、甘い味をつけた水を多く飲みます。また、人工甘味料を好むように飼育された動物は、アルコールを好んで飲むそうです。このことからも、アルコールと甘いものの嗜好には共通点があることがうかがえます。
今回発表された、調査では、男性12名、女性4名の合計16名を対象にしました。平均年齢は26歳。脳の様子を観察しながら、脳のどの部分が水には反応せずに甘い味に反応するかを調べました。また、この部分の脳が、Binge Drinking や、アルコール飲料を1日何杯飲むか等ということと関係しているかを調べました。
すると、甘い味に対する脳の反応は、Binge Drinkingと呼ばれる飲み方に関する脳の反応と関連していることが分かったのです。Binge Drinkingとは、週末などに多量の飲酒を行うことで、欧米では健康問題や社会問題に挙げられています。毎日飲んでいるわけではないのに、一度飲み出すとべろべろに酔っ払うまで飲み続けるという人、あなたの周りにもいませんか?調査では、甘みをつけた水に対する反応が強い人は、お酒を飲むときにはとことんまで飲む、という人に多く見られました。
そして、この脳の反応は、報酬系といわれる働きに関係しているらしいのです。報酬系とは、「この仕事を片付けたら、週末は旅行だから、多少辛くても頑張ろう」というように、この先予想される「いいこと」をイメージすることで、今直面している辛さやストレスを乗り越える強さをもたらす働きです。
ストレス解消法で、甘いものを食べる人もいれば、アルコールで気を紛らわす人もいることも、こうした脳の働きが影響しているようです。
調査チームでは、この研究を更に続けていくことで、アルコール依存症のメカニズムを脳の働きから解明することが出来るのではないかと期待しています。この先、アルコール依存症を脳へのアプローチで効果的に治療出来る時代が訪れるかもしれませんね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
A Preliminary Study of the Human Brain Response to Oral Sucrose and Its Association with Recent Drinking
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/acer.12194/abstract