睡眠不足は誰にとっても良くないものですが、妊婦さんでは赤ちゃんが小さく生まれてくる低出生体重や、その他の妊娠や出産のトラブルにつながりやすいことが分かりました。
また、もともとうつ病の妊婦さんでは、睡眠障害が起こるリスクが高くなるため、さらにこのトラブルが起こりやすくなるそうです。ピッツバーグ大学の医学部が報告しました。
睡眠の質や量が低下する睡眠障害では、妊婦さんにかかわらず男性でも女性でも、免疫系統の健康に悪影響が出るとされています。この結果、炎症性サイトカインという物質が出来ます。この物質が多くなりすぎると、胎盤を通じての妊婦さんと赤ちゃんの、物質の交換がうまくいかなくなり、うつ病、低出生体重、早産などといった病気やトラブルを招くのです。
調査に参加したのは、170人の女性で、うつの人とうつにかかっていない人両方を対象にしました。20週から30週の間での睡眠パターンを分析し、サイトカインのレベルとの関連を調べました。すると、20週の時点では、睡眠障害の妊婦さん、またはうつにかかっている妊婦さんの方が、そうでない妊婦さんよりも、サイトカインの値が高いことが分かりました。
けれども、30週では、通常の妊娠でもサイトカインの値が高くなるので、妊婦さんたちの睡眠状況やうつの有無に関係なく、サイトカインのレベルはほぼ同じレベルでした。このことから、妊娠初期に睡眠障害やうつが原因でサイトカインの値が高くなっている人では、妊娠中の合併症や、産後のトラブルが起こりやすいことが裏付けられたのです。
これまでの調査では、妊娠中のトラブルが多かった女性では、産後に炎症性サイトカインの値が高いことが分かっていましたが、逆に妊娠中のトラブルがあったからサイトカインの値が産後も高かったと考えられるようになりました。
調査チームでは、睡眠という要素は、遺伝情報などと違って、良い方向へと変えることが出来るため、これを調査して、実際の妊婦さんの健康管理に活かすことができる点で、重要度が高いとしています。妊娠と睡眠障害の関係はこれまでも報告されてきましたが、ミッチェル・オクン(Michele Okun)医師が行った今回のレポートは、妊娠中の睡眠と産後の健康を科学的に関連づけた初めての調査となりました。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Disturbed Sleep and Inflammatory Cytokines in Depressed and Nondepressed Pregnant Women
http://www.psychosomaticmedicine.org/