感染性、病原性を知ることが急務
東京大学医科学研究所、国立感染症研究所などの共同研究グループは中国で感染者が増えているH7N9鳥インフルエンザウイルスの特性を解明した。
H7N9ウイルスはヒトには感染しにくいとされるが、死亡例や重症化する例は多数になっている。WHOによると中国の感染者は4月に3名、7月4日現在133人で、43人が亡くなった。感染経路は不明だが鳥から感染した可能性が高い。感染源が確認されない限り、感染者は増加すると予想される。しかも同一家族に複数の発生例が3件報告され、ヒトからヒトへの感染が起こった可能性がある。
バンデミックを起こす危険性は高い
研究グループが中国の患者から分離されたH7N9ウイルスの性状解析を行ったところ、2009年にバンデミックを起こしたH1N1ウイルスと同等の病原性を示した。感染性の実験ではフェレットとフェレットの間で限定的に空気伝播を起こした。つまり哺乳類で増殖する能力があり、哺乳類間で伝播することがわかった。
ウイルスの感染や伝播は宿主細胞に侵入するときの効率が関係し、そうした性質はウイルス粒子の表面上のHAたんぱく質で決まる。H7N9ウイルスのHAにはヒト型レセプターを認識する変異があり、他にもヒトに適応する重要な変異をもっている。しかもヒトにはH7N9の増殖を阻害する中和抗体がなく、すなわちヒトはH7N9の免疫をもたないことが明らかになった。
抗インフルエンザ薬ではノイラミニダーゼ阻害剤に対する感受性が比較的低く、一方で未認可の抗ウイルス薬(RNAポリメラーゼ阻害剤のファビピラビル)がウイルスの増殖を抑制した。
バンデミックとなれば甚大な被害の起きる可能性は高いが、特性を解明できたことでワクチンの開発、抗ウイルス薬の開発などの対策に役立つと期待される。(馬野鈴草)
▼外部リンク
科学技術振興機構プレスリリース
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