米科学誌オンライン版に発表
東北大学大学院医科学研究科医化学分野の山本雅之教授らの研究グループは、腎臓病の進展メカニズムの一端と、これまで治癒は難しいとされていた病態の可逆性についての発見を、日本時間7月6日付の米科学誌「Journal of the American Society of Nephrology」オンライン速報版で公開した。
(画像はwikiメディアより引用)
腎エリスロポエチン産生細胞の性質制御がカギ
研究チームは、これまでに血液産生に関与する腎エリスロポエチン産生細胞を同定、この細胞の変性が腎臓病の進展につながる腎臓の繊維化に寄与していることを明らかにしてきた。
今回発表された研究では、遺伝子改変動物を用いて、腎エリスロポエチン産生細胞の機能不全・形質転換が、腎繊維化の主原因であることを見出した。さらに、形質転換した細胞が炎症性サイトカインを分泌、微小炎症の悪循環をもたらしていることがわかり、炎症シグナルの改善によって、同細胞は正常の状態に回復し得ることを発見した。
この結果は、腎エリスロポエチン産生細胞の性質の制御によって、慢性腎臓病の進展抑制、さらには可逆的回復の可能性があることを示唆している。
JST CREST領域の研究成果
山本教授は、酸化ストレスや内因性ストレス感知センサー分子等の機能解明を長年研究、7月1日には高峰記念第一三共賞受賞が決まっている。本研究は、科学技術振興機構JSTのCREST「炎症の慢性化機構の解明と制御に向けた基盤技術の創出」領域の一環で実施されたものである。
日本国民の成人8人に1人が慢性腎臓病と言われる現在、腎臓病の治療法開発は非常に重要である。透析に至る前に早期発見し、病状を食い止めるのが精一杯である慢性腎臓病が、将来治る病気となることに期待したい。(長澤 直)
▼外部リンク
日経プレスリリース
http://release.nikkei.co.jp/