バルサルタンの医師主導臨床研究をめぐっては、京都府立医大の事例で、ノバルティスファーマの社員がデータ解析に関わっていたことが判明している。今回、疑義が持たれているVART試験は、降圧剤のバルサルタンとアムロジピンで心血管イベントの減少を比較検討した大規模臨床研究。千葉大を中心に実施され、主要評価項目の脳卒中や急性心筋梗塞等の発症と死亡数について、バルサルタン群とアムロジピン群で差はなかった。
第三者委員会は、ノバルティス社員の関与はデータロック以降だったとして、VART試験について固定後のデータ再検証を大手CROに依頼。その結果を中間的に評価したところ、「未だ細部は確認中」としながらも「特段の不正なデータ操作はない」と結論づけた。血圧値は、基本的に論文通り一致し、特段の疑念はなかったとの見解を表明。主要評価項目についても問題はないとし、バルサルタンに有利にしたような改ざんの痕跡は認められなかったとした。
同委員会の平井昭光委員長(日本高血圧学会顧問弁護士)は、「今後は千葉大と話し合い、さらにカルテの照合を含めた生データの解析を行いたい」との考えを示し、詳細な検証を進めていく姿勢を強調した。既に千葉大でも検討委員会が立ち上がっており、同学会からも正式に千葉大医学部長宛てに生データ解析による再検証を依頼したという。
同学会の堀内正嗣理事長(愛媛大学教授)は、臨床研究の統計解析に関与したノバルティス社員を十数年前から知っていたとしつつ、「社員がデータ解析に関わっていたとなれば、学会としても大きな問題であり、早急に解決しなければならない」と述べた。
その上で、現在「高血圧治療ガイドライン」が作成中であることから、社員が関与していたとなればエビデンスの信頼が揺らぐとして、社会的な公平性を保つためにも夏頃にパブリックコメントを求めていく考えを明らかにした。