■報告書を公表
日本医療機能評価機構は、今年1月から3月までの医療事故情報等をまとめた報告書を公表した。新たな事例として、手術前患者等に用いるアドレナリンの希釈倍数の呼称の認識違いから過量投与が行われ、血圧急上昇など循環器系の機能に大きな影響を与えていたことが明らかになった。
アドレナリンを有効成分とする「ボスミン注1mg」「ボスミン外用液0・1%」は、心肺蘇生時やアナフィラキシーショック発症時の第一選択薬として心停止ショック時の補助治療などに用いられ、投与量によっては、心室性期外収縮や急激な血圧上昇を誘発する可能性がある。そのため、アドレナリンの希釈倍数間違えがないよう、「ボスミン注1mg」と「ボスミン外用液0・1%」はアドレナリン原液の1000倍希釈液であるとして「1000倍ボスミン」と呼ばれる。
今回、キシロカイン注射液1%エピレナミン含有などのアドレナリン含有製剤にも「10万倍ボスミン」などの表現で呼んでいる実態が明らかになり、こうした希釈の間違いに関連した事例が1~3月までに5件報告された。
医師が意図したボスミンの希釈倍数について、看護師が用意した製剤が20~200倍の過量投与が行われていたことが分かった。発生場所は全て手術室で、局所出血の予防を目的に投与されていた。
報告された事例では、キシロカイン注射液1%エピレナミン含有を過量投与された患者において、血圧の急上昇や心室細動、心室性期外収縮が見られた。事故の程度は「障害なし」が2件、「障害残存の可能性がある」が3件と、患者への影響程度は小さかったものの、循環器系の機能に大きな影響を与えたことから、重大事故につながる可能性が考えられた。
同機構は、医師の指示する言葉の統一や「5000倍ボスミン」の名称を「外用0・02%アドレナリン液」に変更することなど、誤解を生まない呼称の工夫や分かりやすい製剤の表示、薬剤師の協力を得て、看護師用に手術室で使用する危険物リストを作成するなどの教育を行うよう改善策を提言した。