同研究班は10年度から2年間、薬剤師需給の推計に向けてファクトデータの収集・更新を行い、これらに基づき12年度に今後の需給動向についてシミュレーションによる予測を行った。
供給に関しては、11年度以降の増加要因(国試合格者)については、入学定員を勘案し1万1000人、1万人、9000人の3パターンを設定。その上で、過去2回の6年制課程による国試結果をもとに、合格率を6年制卒75%、総数(6年制卒+その他)75%とした。離職、死亡など減少要因については死亡率による補正を行った。
その結果、新卒者の薬剤師は入学定員1万人の場合、25年をピークに徐々に薬剤師数が減少する傾向が認められたが、1万1000人の場合では減少することはなかった。一方、総数で見ると1万1000人から9000人の場合において減少することはなかったと予測した。
一方、需要予測については薬局と病院が、従事先の約8割を占めており、その傾向に大きな変動はないものとして需要を見通した。薬局の従事者については、推計処方箋枚数を薬剤師1人当たりの処方箋枚数で除することで、薬局薬剤師の動向を予測した。
前提として、処方箋受取率は70%を上限とし、達成後はそのまま横這いするものとした。既に70%を超えている都道府県はそのまま横這いするものと仮定。薬剤師1人当たりの処方箋枚数を都道府県別に算出し、35年までその水準が維持するものとしたところ、10年63・1%に対し35年は71・6%となった。
その結果、35年には21万2404人の需要となり、10年の14万5603人に比べ、6万6801人の増加が見込まれる。一方、10年度の薬剤師1人当たりの処方箋枚数が最も少なかった徳島県の水準(3735枚)に35年度に全都道府県が達すると仮定した場合には、需要は28万0300人に達すると見込んだ。
また病院・診療所の従事者については、11年度の病院病床数158万3073床が今後も横這いであると仮定した場合の薬剤師1人当たりの病床数が、35年度までに現状水準から15~20床になった場合を仮定して、見込まれる薬剤師数の需要を予測した。
その結果、10年度の5万2013人から15床当たりで10万5538人、20床当たりでは7万9154人の需要が見込まれると予測している。
これらの需給動向から、短期的には薬剤師の病院採用は増加すると考えられるとした。また、新設等による入学定員の増加はあるものの、旧4年制国試の合格率と比較して合格者数にあまり差が認められない現時点では、薬剤師の過不足が直ちに問題になるとは考えにくいともした。
ただし、長期的には現在の薬剤師供給需要が維持されたとしても、国や自治体の再就職支援、経済状況の変化、6年制薬剤師の意識の変化等による未就職者減少、就職率向上などが継続していくと仮定した場合、「10年単位で考えると、今後薬剤師が過剰になるという予測を否定できるものではなく、中長期的な視野での対応が求められる。今後も5年あるいは10年単位で需給動向を見極めることが望まれる」と提言している。