■長期品依存から脱却必須
前回ビジョンの策定から6年が経過し、医薬品市場のグローバル化が進展。アンメットニーズや個別化医療に対応した新薬開発が求められている。日本の創薬環境が熾烈な国家間競争に十分対応できていないことや、安倍政権が成長戦略の戦略的分野の一つに健康・医療を位置づけたことなどの変化を踏まえ、日本を真に魅力ある創薬の場へと目指すため、新たなビジョンを示すことにした。
新ビジョンは、医薬品市場や創薬経営環境の変化を踏まえ、「もはや全ての製薬企業が規模にかかわらず、それぞれ特徴を生かした企業にならなければ生き残れない」とし、規模と対象領域だけで企業形態を分類することはなじまないとの認識を示した。
特に中堅メーカーを中心に、強みの領域へ資金を集中すること、バイオ医薬品の技術力を強化することなど「抜本的な転身も必要になってくる」と促し、今後の医薬品産業について「勝ちパターンのビジネスモデル」を自ら作り上げる時代に入っていくとの認識を示した。
新薬メーカーは強い領域への選択と集中やオープンイノベーションに取り組み、研究開発力や国際展開力を向上させることが必要とした上で、新薬開発で得たリターンを新たな研究開発投資に充てる好循環を継続することが重要とし、「長期収載品依存の体質からの脱却は必須」と提言した。
新薬メーカーに求められる機能として、患者ニーズへの対応や海外展開などを挙げ、「これらをどう強化し、企業経営を行うかによって、それぞれの企業の姿が決まってくる」とし、その時の状況に適した企業が生き残る「適者生存」の将来像を提示。「従来の経営形態では通用せず、厳しい経営判断が早急に求められる状況にあるという認識を各企業が共有する必要がある」とした。
また、後発品メーカーに対しては、引き続き安定供給や品質への信頼性確保などの対応を求めると共に、「2013年以降のブロックバスターの特許失効はバイオ医薬品を中心にシフトする」とし、バイオシミラーへの参入や高付加価値製剤の開発など、新分野への進出を促した。
さらに、日本の後発品市場に限界が存在することなどを挙げ、「海外進出は避けて通れない」との見方を示し、「薄利多売のビジネスモデルは通用しない。剤形等の工夫や品質向上でアドバンテージを持つことが不可欠」と指摘。海外を拠点に低価格で生産する道を切り開かなければ、さらなる成長は見込めないと厳しい見方を示した。
■身近な薬局へ変革要求「真価問われている」
一方、薬局・医薬品小売業者の将来像も示した。特に薬局については、「これまでのような病気にかかっても処方箋がなければ入りづらい薬局から、専門性を生かして医薬品に関連する相談が気軽にできる身近な薬局への変革が求められる」と方向性を提示すると共に、「処方箋を持ってくる患者に調剤を的確に行った上で、薬局は医療提供施設、薬剤師は医療提供者として、社会に認知されるかの真価がこれまで以上に問われている」と行動を促した。
さらに、「地域に根ざした薬局・薬店の薬剤師、登録販売者が生活者のニーズに応え、一般用医薬品等の販売を通じた服薬指導や相談応需、受診勧奨、アドバイスを確実に実践していくことが求められる」とし、セルフメディケーションの実践も求めた。