■日薬が調査
居宅療養管理指導等を通じて、薬剤師が服薬状況と効果、副作用等を定期的にモニタリングすることで、[1]服薬コンプライアンスや服薬条件の改善[2]飲み残しの改善[3]患者状況(主訴)の改善――など効果が認められることが、このほど日本薬剤師会がまとめた2012年度老人保健健康増進等事業「居宅療養管理指導および訪問薬剤管理指導のあり方に関する調査研究事業(報告書)」で明らかになった。今後、その効果をより多く提供していくためには、訪問回数など居宅療養管理指導等の算定要件のあり方について、さらに詳細かつ継続的に検討が必要と指摘している。
同事業は、居宅療養管理指導等を活用することでコンプライアンス向上や減薬、ADL改善・維持等の介護保険・医療保険運営上の効果の検証を目的としたもの。
日薬のサポート薬局を中心にした全国515軒を対象に薬剤師の介入効果の調査(介入調査)と、全国無作為抽出2500薬局に対して、居宅療養管理指導等を実施する上での課題に関する調査を行い1250軒から回答を得た。さらに、全国6薬局を対象としたヒアリング調査も実施し報告書としてまとめた。
介入調査では初回訪問、1カ月後訪問、3カ月後訪問の状況についてデータを収集、175軒から回答を得た。
初回訪問のきっかけは「主治医」が約59%を占め、次いで「本人・家族」「介護支援専門員」がそれぞれ11%と続く。訪問回数は初回訪問の翌月1カ月間で「2回」が最も多く44%、月平均2・6回だった。訪問に要した時間は初回訪問の翌月1カ月間で、1回の指導に「15~30分未満」が約44%、「30~45分未満」が約29%で、平均21・1分となっている。
初回訪問時点で服用している薬剤の作用と考えられるものは、「食欲低下」「昼寝、傾眠」「活力低下」(各2・7%)が上位だったが、初回訪問の翌月末時点では「食欲低下」(6・1%)、「便秘」(4・5%)、「食事をおいしく感じない」「手足のむくみ」(各3・0%)が上位となった。
コンプライアンスと関連する服薬に対する期待を、初回訪問時と翌月末時点で比較すると「薬の効果を実感している」が初回訪問の約18%から約27%へ10ポイントほど上昇、「薬がなければ元気でいられないと感じている」が約16%から約24%へと8ポイントほど上昇した。
指導内容は初回訪問時、「薬剤の内容に関する説明」が約80%、「薬剤保管に関する指導」「服薬方法に関する指導」(各74%)、次いで「服薬を支援するツールの利用」「薬識を高めるための情報・指導」(各41%)となっている。翌月末、3カ月後ではそれぞれの項目において低下している。
飲み残しの状況は、初回訪問時「あり」は約43%だが、その翌月末では約24%に減少している。なお、飲み残し発生の理由として挙がっていたのは、初回訪問時は「飲み忘れ」約22%、「用法・用量について正しく理解していないため」約10%、「特に体調が悪くない」約7%という順だった。さらに、その翌月末では「飲み忘れ」約31%、「特に体調が悪くない」約25%、「副作用を懸念しているため」約13%と、“体調”が大きく変動していた。
初回から3カ月後まで全てのデータが得られた事例について分析した結果、初回から飲み残しがなく、3カ月後も飲み残しがない事例は約31%、逆に飲み残しが続いたのは約14%であった。
初回飲み残しがあったが3カ月後改善されたのは約36%、逆に3カ月後になって飲み残しが表れたと回答したのは約14%だった。
また、初回訪問から翌月末までに「処方医へ変更提案した」は約35%で、“提案した”中で“反映された”は約32%を占めた。提案理由は初回訪問から翌月までの間、「薬剤の形状等による飲み残しが認められたため」が約35%と最も多く、3カ月後には同理由が10ポイントほど低下。一方、「望ましくない作用が認められたため」が約13%と増えている。
初回訪問から翌月末までの変更提案の内容は「薬剤数の減少」が約35%で最も多く、次いで「用量の変更」「剤形の変更」が各17%と続く。さらに3カ月後でも「薬剤数の減少」が約31%と多い一方、「薬剤数の増加」が約25%を占めるなど、患者状態に合わせて薬剤の増減等の内容変更が行われていることがうかがえた。