■厚労省が事業レビュー
厚生労働省は21日、事業の無駄を検証する「行政事業レビュー」を実施し、医薬食品局安全対策課の医療情報データベース事業を点検。1000万人規模のデータの必要性や目標達成に向けた道筋の不明確さなどから、「抜本的な改善が妥当」と判定した。
医療情報データベース事業は、医薬品等の副作用の発生確率を算出することで、安全性情報の正確性、迅速性を向上させ、医薬品等の安全対策を推進することを目的に、2011年度から5カ年計画でスタートしたもの。
今年度までに全国10カ所の拠点を整備し、15年度までに1000万人規模のデータベースを構築する基盤整備を目指しており、11年度で2億7900万円、12年度で3億0500万円、今年度で5億1500万円の予算を計上。これまで約10億円程度の国費を投じてきた。
俵木登美子課長は、事業の意義を説明しつつ、10拠点病院から集まるデータが300万人程度にとどまることから、工程の精査や協力医療機関を拡充していく見直し案を提示した。
しかし、外部有識者は、1000万人規模のデータを収集する必要性や目標達成に向けた施策について相次いで疑問を投げかけ、水上貴央弁護士は「どれくらい予算を使えば1000万人規模になるか分からない。事業をいったん廃止し、効果を見極めてからやり直すべき」と一時廃止を提案した。
一橋大学大学院経済学研究科の佐藤主光教授も「いくら予算をかけて、いつまでに目標を実現できるのか道筋を見せてくれないと、国費の投入に説明がつかない」と意見を述べた。
俵木課長は、製薬企業からの拠出金でデータベースを利用してもらい、将来的に手数料収入を見込んでいる計画を披露し、「いつまでも国費で運用していくことは考えていない」と説明したが、最終的に外部有識者6人のうち5人が「抜本改革が必要」と判定。1000万人規模のデータが必要な理由や目標達成に向けたロードマップが不明なことなどを挙げ、「事業全体の抜本的な改善が妥当」と結論づけた。
今後、1000万人規模のデータベース構築の達成時期の明確化や費用負担のあり方などを検討し、来年度概算要求に反映させることが適切とした。