ヒトiPS/ES細胞で作製
アステラス製薬株式会社(東京都中央区)と京都大学iPS細胞研究所(京都府京都市)は、6月18日、ボストンで開催されている国際幹細胞学会ISSCR第11回年次総会で、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)およびヒト胚性幹細胞(ES細胞)から腎臓を再生する課程の一つを効率よく進める方法を発見したと発表した。
(画像はwikiメディアより引用)
腎臓の再生研究の第一人者である京大iPS細胞研究所の長船健二准教授らとアステラス製薬の共同研究。
腎臓の発生と同じ課程を幹細胞で再現
ネフロンとは、腎臓皮質部分に位置する、腎臓の基本的な機能単位で、腎小体とそれに続く1本の尿細管をあわせてネフロンと呼ぶ。
2013年に同グループらは、iPS細胞から腎臓が発生する過程でできる中間中胚葉への分化誘導法を発表している。
今回の発表では、iPS細胞およびES細胞をもとに、中間中胚葉を各種の増殖因子や化合物で処理、ネフロン前駆体を効率よく作製する方法を開発した、としている。
この方法で作製したネフロン前駆体細胞は、
・生体のネフロン前駆体細胞に特徴的な各種の遺伝子発現
・ネフロンを構成する細胞になる能力
・3次元培養系やin vivoでの尿細管特有タンパク質の発現
・尿細管類似構造の形成
が確認されている。
この成果により、ヒトiPS細胞・ES細胞が、胚発生と同様のプロセスでネフロン前駆体細胞であることが示された。
腎臓の再生医療へ
同研究グループは、多能性幹細胞から腎臓の機能単位であるネフロンに存在する細胞を作製し、創薬や再生医療への応用を研究している。
今後、ネフロン前駆体細胞から糸球体、尿細管を構成する細胞を作製する方法を開発し、将来的には、疾患モデル作製や治療薬の評価、さらに再生医療への実現を目指して研究を進めるとしている。
アステラス製薬は2013年から再生医療への取り組みを拡大しており、iPS細胞だけでなく体性幹細胞を含めた再生医療研究を推進している。
将来的には、不可能とされてきた腎臓の再生医療の可能性が期待される。(長澤 直)
▼外部リンク
アステラス製薬プレスリリース
http://www.astellas.com/jp/corporate/news/