報告書では、欧米などでは注射器の連続使用の危険性が指摘されていたにも関わらず、対策が後手に回った要因について、「予防接種に関する先進知見の収集・分析・評価・伝達等を行うための国の体制が不十分だった」と分析。
その上で、「これまでの組織・体制の問題点を洗い出し、十分な改善策を講じることが求められる」とし、再発防止に向け、被害情報や知見を収集する体制を充実させ、リスク認識を適宜に更新するよう求めた。
具体的には、国の予防接種を担当する部署の体制充実や、サーベイランス・検査等に関する国立感染症研究所や地方衛生研究所との連携強化、健康被害リスクの認識・管理・対応の役割を担う厚生科学審議会の予防接種制度評価・検討組織の充実などを挙げた。
また、「国や自治体、医療関係団体は、医療従事者が予防接種の効果や安全性の確保に関する知見を確実に身につけ、その後も刷新し続けることができる環境を整えることが望まれる」とし、医療従事者を対象とした研修の実施なども求めた。
B型肝炎患者らが求めていた再発防止策を実現するための組織については、予防接種行政にとどまらず、厚生行政に関する情報の収集・分析、リスクの管理・対応の役割を担う観点から、政策推進部門との過程で生じる生命健康被害等の問題の監視・是正部門とを分離独立した国家行政組織法第3条の行政機関を設置すべきとの意見があったことを明記した。
一方、独立性を担保するために組織を分離すると、縦割りの弊害も可能性として存在し、必ずしも政策推進部門と監視・是正部門とを分離することが望ましいとは言えず、「第8条の審議会等による第三者組織の設置を目指すべきとの意見もあった」とし、両論を併記。その上で、「これらの議論を踏まえ、組織のあり方の議論を続ける機会や場を設ける必要がある」とするに止めた。
提言書を受け、厚労省の矢島鉄也健康局長は、「同様の事態を二度と引き起こさないよう、必要な予算や定員要求をしたい」と述べ、体制の強化を進めたい考えを示した。