風疹患者数が1万人を突破
今年の風疹患者数が1万人を突破したと発表された。妊娠20週までの女性が風疹に感染してしまうと、赤ちゃんに重い障害が出る「先天性風疹症候群(CRS)」を引き起こす可能性が高い。東京都ではすでに11人目のCRS患者が報告された。
専門家などからは、ワクチンを接種していない者に対して臨時の無料予防接種の実施を行うように医療界は求めているのだが、田村憲久厚生労働相は閣議後の記者会見で「特別な対応を取るところまでは来ていない」と述べた。
国内では1977年から女子中学生への集団接種が行われており、95年度からは生後12カ月以上90カ月未満の男女、そして中学生男女への定期接種ということになった。このため若い世代の男性の接種率が低く、未接種の人の数が多い。患者数が今年急増した理由は明確とはなっていないのだが、例年にない患者数となっているため、財政支援を求める声が強まっている。
風疹はワクチンで防ぐことができる感染症である。1回接種した場合には95%以上、2回接種すると99%以上の人に効果があるということである。これ以上感染者数を増加させないためにも、周囲がワクチンを接種することが必要となっている。
(画像はイメージです。)
子どもたちを守れ
先天性風疹症候群は生まれつき目が見えない,重い先天性心疾患を持って数年も生きられないなど、多くの障害を抱えて生まれてくる。風疹の場合はワクチン接種を受ければほとんどの確率で防ぐことが出来る。日本は世界トップクラスの医療レベルの国家と言われているが、無為無策のまま患者数を増加させる現状では、この姿勢を保つことは出来ないだろう。
田村厚労相は「重篤な被害や死者が他の感染症にも出てきており、風疹だけ抜き出しては難しい」との見解を示しているが、米国や英国など多くの先進国の厚生行政担当者は、日本の風疹大流行を極めて憂慮している。
政府の成長戦略、いわゆるアベノミクスでも医療を重点成長分野としているのに国内で風疹の大流行を放置するという無策の状態であることに医療界からは強い批判が起きている。
さらに、厚労省はワクチン接種者の増加に伴って、8月にもワクチンが不足する可能性が高まっている。任意接種については、妊婦の周囲や妊娠希望者を優先するように地方自治体などに通達を出している、これでは流行を封じ込めることは出来ない。
国立国際医療研究センター国際感染症センターの大曲貴夫センター長は「目的はCRSを減らすことであり、ワクチンの数を維持することではない。今は非常事態である。不足した場合は、ワクチンを輸入することも考慮して議論すべきだ」と話している。
ワクチンの増産、緊急輸入を
厚労省は直ちにワクチンメーカー各社に増産指示、そして海外からワクチン輸入を検討すべきだろう。
ワクチン輸入は古くは1960年代日本中を覆っていた悲惨なポリオ禍を当時の古井喜實厚生大臣の政治的英断により旧ソ連からのワクチン緊急輸入の実施により、わずか数ヶ月で激減し、厚労行政がトップダウンで実施し多くの国民の命を救った先例だ。2009年にも新型インフルエンザワクチンを輸入したのも記憶に新しい。
田村大臣にも未来ある子供の命を救うために、今こそ政治的英断を期待したい(福田絵美子)
▼外部リンク
田村大臣閣議後記者会見概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/2r98520000034ta3.html
田村大臣オフィシャルサイト
http://www.tamura-norihisa.jp/
風しんで先天性風疹症候群、11人めを発表
https://www.qlifepro.com/news/20130619/announced-11-year-congenital-rubella-syndrome-rubella.html