新しい調査報告で、心と体の意外な関連が見つかりました。気分障害と診断された人の3人に1人が、何らかの感染症で入院経験があることが分かったのです。
感染症というと物々しい雰囲気がありますが、お腹を壊したり、膀胱炎にかかったり、傷口が膿んだりといった経験はあるという人が多いのではないでしょうか。病院に行くことなく、自然に治った人もいれば、入院を余儀なくされた人もいるでしょう。
感染症で入院したことがある人は、気分障害にかかるリスクが6割も高くなるのだそうです。調査チームによれば、これは、免疫機能と気分障害に関係があることを示しているとされています。
この調査は、1945年から1996年に産まれた、ドイツ系デンマーク人356万人について、1977年から2010年の間に追跡したデータを元に分析されました。追跡期間中の30年あまりの間に気分障害で通院や入院をした人が、91000人いました。このうち、32%の人が、過去に感染症で入院したことがあり、5%の人が免疫機能の低下で入院したことがありました。
脳は、通常は血液脳関門によって、守られています。血液脳関門とは、毛細血管がきわめて細いことや、必要なものを取り組み異物は排除するという生理的な身体の働きが補い合って、血液中の物質が髄液を通じて脳に侵入することを制限している身体の機能です。ところが感染症の影響でこの機能がうまく働かなくなることがあるそうです。その結果、感染症が脳に影響を及ぼすことで、気分障害を引き起こすことがあるのではないかと解釈されています。
今後この身体の機能について、更に調査を進めることで、将来的に気分障害の治療法を改善する手がかりがつかめると期待されています。
身体と心は、まだまだ切り離して捉えられがちですが、このように科学的につながりが証明されることも増えてきました。思いがけない不調に見舞われないよう、日頃の健康管理を心がけたいものですね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Autoimmune Diseases and Severe Infections as Risk Factors for Mood Disorders
http://archpsyc.jamanetwork.com/