セツキシマブの効果をあげるには
慶應義塾大学の研究グループは切除が不可能な進行・再発の大腸がん治療に使用する抗がん剤セツキシマブの治療効果に新たな手法を開発した。
患者の生命予後を延長するために、細胞毒性をもつ抗がん剤に加え細胞内シグナル伝達を制御する分子標的治療薬のセツキシマブの働きが重要だ。セツキシマブは大腸がん細胞膜の上皮成長因子受容体(EGFR)に結合しEGFRの活性化を阻害してがん細胞を抑制する。
しかしタンパクの遺伝子KRASが変異した大腸がんでは十分な治療効果がなく、KRAS遺伝子の変異の有無から効果が見込めない患者への不必要な投与を回避している。もっともKRAS遺伝子の変異がなくても治療効果は40-60%、100%に近づけるには効果が見込める患者を選別する新たなバイオマーカーが必要になる。
EGFR発現量とセツキシマブの効果を相関させる
研究グループはEGFR発現量が治療効果に関連しない点に着目し、セツキシマブが作用しないEGFRも検出していると考えた。そこでセツキシマブ自体を一次抗体とし、レーザー光線を照射し蛍光物質で標識して、結合するがん細胞を測定する手法を開発した。
ヒト大腸がん由来の細胞株からEGFR発現量の異なるサブクローンを作成しEGFR検出法で測定した結果、EGFR高発現、低発現の細胞株の抽出に成功した。セツキシマブを評価する実験を行う一方、細胞株を免疫不全マウスに移植しセツキシマブを投与して効果を検証した。いずれでもEGFR高発現細胞株に腫瘍の増殖を抑制する強い効果が見られ、EGFR発現量がセツキシマブ感受性に相関することが立証された。
今後、新たなバイオマーカーで治療効果を予測し、KRAS遺伝子に変異のない大腸がん患者から治療効果の見込める症例が抽出できると期待される。(馬野鈴草)
▼外部リンク
慶應義塾大学プレスリリース
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