■薬学会・公開討論会
日本薬学会は13日、4年制課程に進んだ学生に薬剤師の国家試験受験資格を特例で認めている経過措置を存続させるべきかをめぐり、推進派の柴崎正勝会頭と反対派の遠藤浩良帝京大学名誉教授との公開討論会を開いた。両者とも、多様性のある薬剤師を育成する観点から、研究マインドを持った学生にも薬剤師になれる道を残しておく必要はあるとの認識は一致したものの、遠藤氏はそのための手段について、「経過措置の存続ではなく、学士入学を用いるべき」と主張し、意見は対立した。討論にはフロアの関係者も加わったが、意見は二分した。
薬学教育6年制の移行に伴い、基礎薬学や創薬科学関連の教育研究を確保するため残された4年制課程に進んだ学生でも、2017年度入学者までは卒業後の修士課程2年に加え、共用試験や実務実習などの臨床教育を2年行う(4+2+2)ことで、国試の受験資格を認める経過措置がある。
柴崎氏は、3月の薬学会年会の会頭講演で、4+2+2の経過措置を18年度以降も存続させるべきと主張し、議員立法による措置も視野に日本薬剤師会、日本病院薬剤師会などの理解を得たい考えを示した。
遠藤氏は、こうした考えに異論を唱えていたとされており、薬学会が推進派の柴崎氏と反対派の遠藤氏による討論会を企画した。
討論会で柴崎氏は、「本当にチャレンジングな発言、行動だが」と断った上で、経過措置の存続が必要な理由について、「これからは多様性のある薬剤師を輩出することが求められるため」と説明。また、6年制学科の中には、「基礎研究に割り当てる時間数が従来の3分の1に減ったところもあるようだ」とし、「薬学は、研究があってここまできた。積み上げてきた薬学研究のレベルを下げたくない」ともした。
遠藤氏は、基礎研究をしっかり学び、科(化)学的なバックグラウンドを持った臨床現場で活躍できる薬剤師が輩出されることに異論はないとしたが、国試の資格を取得するための手段については、「従来からある学士入学の制度を用いて、不足している単位を履修すれば、法律的に特例の経過措置を延長しなくても済む」と主張し、意見が対立した。
フロアの関係者からは、既に6年制の2期生が出ている状況では、薬学教育を6年制に一本化し、6年制課程の中に医療薬学コース、創薬コースなどの多様なコースを設けてはどうかとの意見や、学生の進路の選択肢を増やすことの意義を強調する意見も出た。
討論の締めくくりに、司会の冨士薫氏(京都大学名誉教授)が推進派と反対派それぞれに、拍手を求めたところ、ほぼ五分五分だった。経過措置の存続を議員立法で措置する場合、日薬や日病薬の協力が必要になる。討論終了後、柴崎氏は「8月上旬までにそれぞれの会長に考えを確認したい」と語った。