■新検討会や国会審議へ対応
日本薬剤師会の児玉孝会長は6日、定例会見で、政府の一般薬ネット販売に関する方針に対し、「日本の薬事行政の基本的な考え方である医療安全をないがしろにするもの。国民不在の内容。国民の生活に及ぼす影響、安全性を心配している」と強く批判した。「今後、第1類の扱いに関する専門家による検討会や法改正には国会での審議が必要であり、決して終わったわけではない」とし、日本医師会と共に最後まで抗戦していく構えを見せた。
児玉氏は、正式な見解は14日の閣議決定後に示すとしたが、厚生労働省の検討会の審議は不毛だったとすると共に、「本当に国民の立場、医療安全を踏まえた上で政治的判断をされたのか疑問だ」と官邸への不信感を語った。
成長戦略の観点については「インターネットで売ったからといって、誰もかぜ薬を余計に買わない。成長戦略でない。現在の薬事行政は過去の薬害などによる多くの方の犠牲があって、社会的規制を整備してきた結果であり、それが全部飛んで、ITが全てということになってしまっている」と、解禁が経済成長に寄与するものではないことを強調すると共に、これまで積み上げてきた薬事行政そのものを覆すことだと指摘。
「薬事(行政)の基本は対面。一番大事な人の命であり、それを補助する手段の一つとしてIT化は重要だが、議論が逆さまになっている。患者の安全は二次的に扱われている。医療安全、医療の根幹に関わることが出てきているので、今後とも日医としっかり共闘していかなければと思っている」「国は、現場で(医療)安全が確保されない形を選んだのだから責任を取ってもらう必要がある」との考えを示した。
このほか、成長戦略(素案)でレセプト等の電子データの利活用が示されている点を捉え「(データの)活用まではいいが、それをビジネス化するという考え方は大変危険。TPPにより、アメリカの民間保険会社と結びつくことになる」と、危惧を表した。
健康食品等の機能性表示の緩和に関しては、「昨年、消費者庁が行った調査によると、健康食品を飲んでいる人の11%が、それで病気が治るという勘違いをしているとのデータがある。誤解を招かないよう、ある程度規制しなければならない。セルフメディケーション推進の上で健康食品等はツールとして大事だが、消費者が正しく選択してもらえるようにする必要がある。供給側には責任がある」と指摘した。
ただ、今夏に控えた参議院議員選挙に関しては、「日本薬剤師連盟でも(支持をやめろとの)強い意見も出ているが、自民党というより官邸主導で行われたこと。国会に出されれば正しいか否か議論してもらう必要がある。その際に国会議員には、しっかり理解してもらう必要がある」とし、自民党支持は堅持しつつ、審議の過程で修正等を働きかけていく方針を強調した。