トルバプタン
大塚製薬は希少疾病の常染色体優性多発嚢胞腎( Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease、ADPKD)の治療薬として自社創製の「トルバプタン(一般名)」の承認申請を5月に行った。
(Wikiコモンズを利用)
トルバプタンは大塚製薬の薮内洋一フェローが26年をかけて開発した薬剤で、水利尿薬「サムスカ」として浮腫を抱えるうっ血性心不全患者に処方される。バソプレシンV2受容体拮抗作用で水だけを出す効果をもつ一方で、選択的に同受容体を阻害しcAMPの産生を抑制する働きもある。ADPKDの腎嚢胞の増殖・増大を抑制し進行を遅らせることが2003年に発見され、大塚製薬は同疾患の治療開発に取り組んできた。
世界15カ国の治験医師とADPKD患者1400名以上を対象に3年間トルバプタンの国際共同試験を実施した結果、腎臓の容積の増加率が約50%抑制され、腎臓の増大と腎機能の低下に対する抑制効果が評価された。
今年4月の米国食品医薬品局(FDA)に続く2カ国めの新薬申請受理となれば、ADPKDに対する適応をもつ世界初の治療薬となる。すでにFDAに希少疾病用医薬品と指定され、国内では2006年に「多発性嚢胞腎の進行抑制」の指定を受けている。販売名は未定。
ADPKD
ADPKDは腎臓に多数の嚢胞ができ腎臓が大きくなる病気で、高血圧や腎臓の痛みなどの症状を伴う。次第に腎機能が低下し最終的に腎不全に至る。遺伝性の病気だが頻度が高く1000~4000人に1人が罹患すると推定され、日本には31000人、米国には11万6000人の患者がいるとされる。有効な治療薬はまだない。(馬野鈴草)
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大塚製薬株式会社ニュースリリース
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