5件の医師主導研究について
ノバルティス ファーマ株式会社(東京都港区)は、日本で2001年から2003年に開始したバルサルタンの医師主導臨床研究5件について、同社元社員の関与と研究論文が適切に開示されず、試験研究の信頼異性を揺るがしかねなかったことについての謝罪を発表した。
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関与あり、改ざん等はなし
同社の調査によると、元社員はこれらの研究におけるデータ解析などに関わっていたが、意図的にデータの操作や改ざんはしていなかったとしている。
また、バルサルタンの医師主導臨床研究の論文に、この元社員の所属としてノバルティス社が明記されていなかった点については、不適切であったことを認めた。
プロモーション用論文の審査システムに不備
同社によると、当時は医師主導臨床研究における利益相反を明確にしたガイドラインがなく、担当者たちは製薬企業社員の関わり方に対する理解と教育が不足していた、としている。
この論文は、同社のプロモーションに引用されていたが、プロモーション資材に関する社内の審査委員会は利益相反の視点でのチェック機能をもたず、また社員の臨床研究への関与記録システムも存在しなかった。
同社はプロモーション資材の審査プロセスを厳格化し、利益相反や医師主導臨床研究等について社内教育を徹底させていくとしている。
また、今年6月から8月までの間、バルサルタン関連の後援会の自粛や関係役員の報酬の減額などを決めた。
有効性や安全性は問題無し
バルサルタン(製品名:ディオバン(R)錠)は、同社で製造販売しているアンジオテンシンII受容体拮抗薬であり、適応症は高血圧や心不全。
今回問題となった医師主導研究は、バルサルタンの承認取得や添付文書改訂には使用されていない。したがって、同薬の有効性や安全性には問題がないとしている。
ノバルティス問題は、論文捏造については未だ決着がおらず、さらに本社の調査結果も未発表だ。また、日本の調査報告書も現在は未公開。ノバルティス社を退社した、かつての担当者・責任者の説明もされていない。これらがどのような形で公開されるのか、注視したい。(長澤 直)
▼外部リンク
ノバルティス ファーマ株式会社プレスリリース
http://www.novartis.co.jp/news/