ヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)、聞いたことがありますか?長い間、胃炎や胃潰瘍は、香辛料やストレスなどが原因と信じられてきましたが、20年ほど前に多くの胃潰瘍の患者さんの胃液からピロリ菌が検出され、胃や十二指腸の潰瘍や炎症を引き起こすことが分かりました。
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International Olive Oil Council)
また、胃がんの患者さんからも同様にこの菌が検出されることから、ヘリコバクター・ピロリ菌を退治することは、胃や十二指腸の潰瘍だけではなく、がんの予防にもなると解釈されるようになりました。通常、治療は抗生物質を使って、菌を退治します。
この方法とはまた別に、人工的に胃と同じ状況を作り出した研究室で実験すると、バージンオリーブオイルがピロリ菌の繁殖を抑える働きがあることが2007年に報告されました。この報告を受けて、実際にピロリ菌が陽性の人にバージンオリーブオイルを飲んでもらう実験が行われました。
60人のピロリ菌陽性の人たちに、エキストラバージンオリーブオイルの14日間飲んでもらい、尿素呼気試験でピロリ菌がいるかどうかを判定しました。ピロリ菌がもつウレアーゼという酵素が胃酸と反応して尿素を発生させるので、菌がいる場合吐く息に尿素が含まれるのを利用した検査方法です。
グループAでは、バージンオリーブオイル30グラムを14日間飲み、1ヶ月の期間をおいて、異なる種類のバージンオイル30グラムをもう一度14日飲みました。
もう1組はグループAで使った2種のバージンオリーブオイルのうちどちらか一方を、1日30グラムで14日間飲みました。
すると、グループAのオイルを2回飲んだ人では、開始から4-6週間後30人中8人で、ピロリ菌が陽性でしたが。オイルをのんだ24時間から72時間後では、12人では菌が見られませんでした。そして、1回目の14日間よりも、2回目の14日間の後の方が、菌が見られない人が多くなりました。
14日間を1回だけ行った人グループBでは、開始後4-6週間では、およそ10%の人で菌が見られず、オイルを飲んで24-72時間では30人中5人で菌が見られませんでした。
今回の調査では、オリーブオイルの味が合わずに断念した人もいるとのことで、まだ効果が科学的に検証されたというほどではありません。抗生物質のように強くはありませんが、予防として考えてバージンオリーブオイルを習慣的に摂ることは問題なさそうです。今後長期的にオリーブオイルを摂ると、良い効果が得られるかなどが調査されそうです。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Assessment of Helicobacter pylori Eradication by Virgin Olive Oil
http://onlinelibrary.wiley.com/
In Vitro Activity of Olive Oil Polyphenols against Helicobacter pylori
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf0630217
International Olive Oil Council
http://www.internationaloliveoil.org/