膵島細胞移植に代わる新しい治療法へ
京都大学再生医科学研究所の角昭一郎准教授と柳井伍一研究員らのグループは、5月29日、膵島細胞と間葉系幹細胞の融合細胞が、糖尿病治療に有望であることを世界に先駆けて発見、5月28日付の「PLOS ONE」オンライン版に公開したと発表した。
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移植膵島細胞は短期間で機能低下
重症の糖尿病では膵島移植が低侵襲性治療法として期待されているが、移植早期に膵島細胞の多くが失われ、インスリン治療が不要になる確率は低いとされている。
インスリン治療不要となる場合でも、複数回の移植が必要であり、移植した膵島細胞の長期維持が課題。炎症・免疫機能制御機能や血管新生誘導機能、アポトーシス制御機能などを有する間葉系幹細胞と一緒に移植することで、膵島移植成績が向上する試みも報告されている。
融合膵島細胞は3ヶ月間機能持続
同研究グループではラットの膵島細胞と間葉系幹細胞を電気的細胞融合法で融合、通常数日で失われる膵島細胞のブドウ糖反応性インスリン分泌機能を、この融合細胞は培養後20日間も維持できた。これを同系の糖尿病ラットへ1,000個、腎被膜下に移植したところ、血糖値は少しずつ持続的に低下し、血糖低下作用が3ヶ月に渡って確認された(図※参照)。
一人から複数への移植細胞作製の可能性も
遺伝子発現を解析したところ、この融合細胞では膵島細胞の核と間葉系幹細胞の核が相互にリプログラミングされており、膵島細胞の内分泌機能と間葉系幹細胞の細胞維持機能を併せ持つ細胞であることがわかった。
この結果、少量の膵島細胞を利用して、融合膵島細胞による効果的な治療法の可能性が見えてきた。ドナー1人から単離した膵島から複数の治療用細胞資源が確保できる可能性もあり、画期的な再生医療の一つとなり得ると期待される。(長澤 直)
▼外部リンク
京都大学プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/