■会営薬局で偏在化解消へ
北海道薬剤師会は、薬剤師確保が困難な地域や無薬局町村等の医薬品供給を支援するため、6月にも派遣薬剤師の登録をスタートさせる。昨年10月1日付で札幌市内に地域薬局活動の支援拠点と位置づける「会営薬局」を開設。道内の派遣要望に関する実態調査をもとに、約半年にわたって準備を進めてきたが、薬剤師の派遣登録を開始できる見通しが立った。当面は、薬剤師派遣によって地域偏在化の解消を目指し、中長期的には、無薬局町村に医薬品調剤、服薬相談等を実施できる体制整備を検討していく考えだ。
道薬は、道から助成金を受け、道央(札幌市)に地域医療再生を目的とした会営薬局の整備を進めると同時に、広大な北海道で顕在化する薬剤師不足や無薬局町村を解消し、在宅医療の取り組みを進めるため、道南(函館市)、道北(旭川市)、オホーツク(北見市)、十勝(帯広市)、道東(釧路市)の道内5医療圏に無菌調剤室を整備した「基幹薬局」を指定。道内全域の地域薬局活動を支援する体制を作った。
会員薬局を対象に、薬剤師の派遣要望に関する実態調査を行ったところ、回答があった376薬局のうち、薬剤師の充足状況について「不足している」との回答が93薬局(24・7%)と全体の4分の1に上った。特に道北エリアが15薬局、十勝エリアが10薬局、オホーツクエリアが9薬局と不足感が強かった。また、薬剤師の派遣要望については、「すぐに要望したい」が48薬局(12・8%)、「不足時に要望」が108薬局(28・7%)、「正規採用したい」が41薬局(10・9%)等と回答し、派遣を要望した薬局は全体の52%を占め、薬剤師派遣事業に高い関心が示されていることがうかがえた。
調査結果を踏まえ、道薬では会営薬局を拠点に、経験年数に応じて在宅医療の座学研修や無菌調剤の手技実習等の研修会を実施。さらに薬剤師の派遣体制を整えるため、道薬として無料職業紹介事業者の許可を取得するなど、薬剤師派遣に向けた準備を進めてきた。
有澤賢二副会長は、「広域分散型の北海道では、薬剤師の地域偏在化が大きく、離島もある。道内5カ所の基幹薬局に会営薬局としての役割を担ってもらい、薬剤師不足の地域に、調剤もOTC薬の相談もできるオールマイティーな薬剤師を派遣していきたい」と方向性を語る。
今後、道薬では、薬剤師不足の地域や無薬局町村のニーズを把握した上で、十分な経験を持つ薬剤師から出産・育児などでブランクのある薬剤師まで、それぞれのレベルに合わせた研修を実施し、順次登録した薬剤師の派遣をスタートさせたい考えだ。
既に道内の市町村長から、薬剤師の派遣要望が寄せられており、有澤氏は「何とか早く実績につなげたい」と意気込む。早ければ6月にも薬剤師の派遣を開始できる見通しだ。
会営薬局の目的は、社会貢献事業と位置づけていることから、派遣登録する薬剤師は、道薬会員を問わず広く募集する。有澤氏は「まだ会営薬局の運営は、会費を使わせてもらっているが、最終的には自助で収益を上げ、薬剤師派遣事業を広げていきたい」と話している。
中長期的には、無薬局町村への医薬品供給が大きな課題となる。法的にクリアしなければならない問題も多いが、仮薬局の設置や移動型調剤施設の利用等が考えられている。まだ、無薬局町村への対応については全く白紙の状況だが、有澤氏は「地域のニーズに合わせて薬剤師を派遣し、基幹薬局を通じて医薬品を供給したり、在宅医療を進めていけるようにしたい」との構想を示す。
地域医療再生を掲げてスタートした道薬会営薬局は、基幹薬局を足がかりに薬剤師不足の地域や無薬局町村に薬剤師を派遣するという、全国でも類を見ない取り組みとなる。有澤氏は「北海道は地域性が強いので、しっかり社会的な貢献を形として見える取り組みにしていかなければならない」と話している。