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放射線医学研究所、重粒子線照射がん治療の臨床を開始

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2013年05月22日 PM05:13

がん治療の選択肢拡大へ

独立行政法人放射線医学総合研究所重粒子医科学センター(千葉県千葉市)は5月20日、所内倫理委員会の承認を受け、早期乳がん患者を対象とした重粒子線治療の臨床試験を開始することを発表した。

(画像はWikiメディアより引用)
今回対象とするのは60歳以上のI期で、腫瘍の広がりが局所に限局している「低リスク群」。第I相試験で適切な線量を設定し、第II相試験では非手術で経過を観察する。

注目される重粒子線治療

重粒子線は、ヘリウム以上の重い元素をイオン化し、加速器によって加速して作られる。放射線医学総合研究所では炭素イオンを加速した炭素線を用いる。

この重粒子線がん治療は、厚生労働省の先進医療として承認、平成6年より治療を開始し、登録患者数は約6500名となっている(平成24年2月現在)。

同センターは、この炭素線を使ったがん治療や関連する研究を行ってきたが、乳がんを系統的には扱っていなかった。乳がん転移巣への重粒子線照射や、他のがん種への抗腫瘍効果・安全性から、乳がん原発巣に対しては、術後照射ではなく重粒子線による根治照射が有効と考え、この臨床試験に着手することになった。

今回開始される試験では、計4回の重粒子線照射3ヶ月後に病理学的効果判定と有害事象を考慮して推奨線量を決定するところまでが第I相試験となる。

早期乳がんの低侵襲撃治療法へ

乳がんは日本人女性に最も多いがんであり、生涯に16人に1人の割合で罹患する。比較的早期に発見され、生存率も約90%と高い。早期乳がんの治療は、乳房温存手術と全乳房照射を組み合わせた局所療法と、全身薬物療法を組み合わせるもの。原則的には外科的切除を必要とする。

重粒子線治療が可能になると、施術できない患者への低侵襲職所治療が可能となり、乳房を温存したい、また手術をせずに乳がんを治療したい患者に新たな選択肢を提供できる。(長澤 直)

▼外部リンク

(独)放射線医学総合研究所
http://www.nirs.go.jp/index.shtml

(独)放射線医学総合研究所プレスリリース
http://www.nirs.go.jp/information/event/report/2013/0520.shtml

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