人の進化の過程解明に期待
5月16日、共同で研究を行っている慶応大学・京都大学霊長類研究グループによって、チンパンジーのiPS細胞の作製に成功したことが発表された。大型類人猿でのiPS細胞の作製成功は、世界初となる。
(この画像はイメージです。)
国内の動物園で自然死したチンパンジーの細胞が使用され、iPS細胞の作り方は人間の場合とほとんど同じ方法が用いられた。作製されたiPS細胞はその後安定して増殖し、神経細胞への分化も確認されている。
チンパンジーは人と98.8%同じDNA配列を持っており、チンパンジーと人の違いがどの部分によるものかは判明していない。この研究によって人類が進化した過程も明らかになることが期待される。
また研究グループはオランウータンやテナガザルといった個体数が減少している霊長類のiPS細胞作製にも着手することを予定しており、このことにより絶滅危惧種の保存・人工繁殖の可能性にも期待が高まる。
iPS細胞は難病患者の希望
iPS細胞は4月には筋ジストロフィー、5月にはてんかんの病態を再現することに成功しており、これらの病気の治療に大きく役立つものとしても注目されている。
iPS細胞を使った難病の新薬研究プロジェクトに政府が取り組むことも発表されている。患者数が少ないため世界的にもなかなか研究が進まない分野において、日本初の治療薬を送り出すことが目標だ。(小林 周)
▼外部リンク
慶應義塾大学報道発表記事
http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/