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臨床応用可能な人工酸素運搬体の合成に成功 

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2013年05月17日 PM08:13

求められる輸血液の代替物

中央大学のグループは生体内で酸素を輸送できる人工酸素運搬体を開発した。大規模災害の大量需要に対する常備、少子高齢化による献血者人口の減少から慢性的な輸血液不足が予想される。血液型に関係なくいつでもどこでも使用できる輸血液の代替物、人工酸素運搬体の実現は急がれている。

赤血球の酸素輸送タンパク質、ヘモグロビンを用いた修飾ヘモグロビン製剤などが開発されてきたが実用化しない。1990年代に着手した米国製のヘモグロビン重合体は臨床試験の第三相まで進むも構造の不均一、血圧上昇の副作用からいまだ認可されていない。ヘモグロビン分子が血管内皮細胞から漏出し血管内皮由来、弛緩因子の一酸化窒素が捕捉されるため、血管収縮、血圧亢進が懸念される。

酸素を運ぶタンパク質クラスター

同グループはヘモグロビンの分子表面に3個の血清タンパク質アルブミンを結合させた(ヘモグロビン―アルブミン)クラスターを開発した。アルブミンはヒトの血清に最も多く溶解するタンパク質。ヘモグロビンをこれで包み、アルブミンの性質をもち赤血球のように酸素を運ぶクラスター状分子を作った。

1つのヘモグロビンを複数のアルブミンで包み込むために、アルブミンに1つだけ存在する34番目のアミノ酸システインとヘモグロビンの表面を結合させることでクラスター構造を実現した。立体構造の詳細は特殊電子顕微鏡で解明し、生理条件下で酸素を安定して輸送できる製剤としての可能性も実証した。

このクラスターは出血ショックの蘇生液、術中出血時の補充液、救急車内の酸素供給液などの赤血球代替物になる。また心不全、脳梗塞、呼吸不全の虚血部位への酸素供給液、移植用臓器の灌流液や保存液、がん治療用増感剤などに利用できる。室温長期保存が可能でウイルス感染の恐れもない。多様な用途からその完成が望まれている。(馬野鈴草)

▼外部リンク

中央大学プレスリリース
http://www.chuo-u.ac.jp/

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