■武田とエーザイは大幅減益
国内大手製薬企業5社の2013年3月期決算(連結)が出揃った。アステラス製薬、第一三共、大塚ホールディングス(医療関連事業)の3社が増収増益となった。一方、最大手の武田薬品は、スイスのナイコメッド社の通年寄与で増収を確保したものの、研究開発費の増加が響き50%台の営業・経常減益、エーザイは、抗アルツハイマー症治療薬「アリセプト」と胃潰瘍治療薬「パリエット」の特許切れ影響を拭いきれず、二桁の減収減益と対照的な結果となった(表参照)
武田は、ナイコメッドの売上を通年計上したほか、昨年6月に買収した痛風治療薬を販売するURLファーマなどを加えたことで海外売上が6・1%増と拡大。欧州やアジアを含む新興国が牽引し、米国でも抗癌剤「ベルケイド」の伸長により、25・4%増となった。
ただ、薬価改定を受けた国内では、2型糖尿病治療剤「アクトス」や消化性潰瘍治療剤「タケプロン」の落ち込みを、2型糖尿病治療剤「ネシーナ」や抗癌剤「ベクティビックス」など新製品の売上増で吸収しきれず、微減となった。
アステラス製薬は、排尿障害改善剤「ハルナール」が後発品影響で売上を減らしたが、新製品の前立腺癌治療剤「エクスタンディ」、過活動膀胱治療剤「ベタニス/ミラベトリック」や、グローバル製品の免疫抑制剤「プログラフ」、過活動膀胱治療剤「ベシケア」などが引き続き伸長。地域別では、日本が0・2%減とほぼ横ばいとなったが、海外については、米国・欧州・アジアで拡大し、売上高は1兆円を突破した。
第一三共は、主力の高血圧治療剤「オルメサルタン(一般名)」が3・7%増の2589億円に拡大。ランバクシーの売上高も5・7%増の1854億円と貢献した。日本では、主力品が売上を減らしたが、アルツハイマー型認知症治療剤「メマリー」や逆流性食道炎等治療剤「ネキシウム」などの新製品が大幅に成長した。
大塚HDの医療関連事業は、エビリファイがグローバルで拡大し、6・5%増の4385億円と順調に推移したほか、国内で新薬が成長した。一方、エーザイは、癌領域で1000億円を突破し、国内製薬企業の売上ランクでトップ3入りを果たしたが、アリセプトが36%減、パリエットが14%減と主力2品の落ち込みをカバーしきれず、唯一の減収となった。
営業利益では、製品構成の若返りで原価率が低下したアステラス、販売促進費を低減した大塚HDが二桁増益、経費削減を進める第一三共も増益となった。一方、武田は、当初予想より研究開発費が膨らんだ結果、約53%の大幅減益。エーザイは前期と同じく二桁減益となった。
14年3月期は、アステラス製薬が二桁の増収増益と躍進が続く見通し。武田と第一三共、エーザイが増収増益、利益予想を開示していない大塚HDも揃って増収を見込む。