GPR41の活性化がエネルギー恒常性を維持する
京都大学などの共同研究グループは腸内細菌が脂肪の蓄積を抑制し、肥満を防ぐ機能をもつことを明らかにした。
食事のエネルギー摂取は余分なエネルギーを脂肪として体内に蓄え、不足時に有効利用する。過剰なエネルギー摂取は脂肪の膨大、エネルギー恒常性の破綻から肥満・糖尿病などの生活習慣病を招く。
腸内細菌がエネルギー調節や栄養摂取のエネルギー恒常性維持に関与し、生活習慣病の病態に影響することは知られている。研究グループは腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸がエネルギー源として利用されるだけでなく、脂肪酸受容体GPR41を活性化させ交感神経系を介してエネルギー恒常性の維持に関わることを以前に明らかにした。今回はもう一つの短鎖脂肪酸の受容体GPR43の働きを解明した。
GPR43の活性化が肥満を防ぐ
Gpr43遺伝子を欠損したマウスは肥満の傾向を示し、GPR43を過剰発現させると痩せの傾向を示した。腸内細菌を消失させるとエネルギー代謝異常は見られず、腸内細菌が原因とわかった。さらにGPR43が筋肉、肝臓など他のインスリン作用組織ではなく、脂肪組織でのインスリン作用のみを選択的に抑制するとわかった。
腸内細菌の機能は
1. 食物によるブドウ糖や脂肪酸のエネルギー源と同時に、腸内細菌により短鎖脂肪酸がエネルギー源として産生される。
2. 短鎖脂肪酸はエネルギー源として使用されるが、エネルギー過剰時に短鎖脂肪酸も過剰に上昇する。
3. 短鎖脂肪酸の上昇でセンサー受容体GPR43が活性化し、脂肪組織の過剰エネルギー蓄積を抑制してエネルギー消費へと誘導する。代謝機能異常の防止、エネルギー消費の向上でエネルギー恒常性は維持される。
2. 短鎖脂肪酸はエネルギー源として使用されるが、エネルギー過剰時に短鎖脂肪酸も過剰に上昇する。
3. 短鎖脂肪酸の上昇でセンサー受容体GPR43が活性化し、脂肪組織の過剰エネルギー蓄積を抑制してエネルギー消費へと誘導する。代謝機能異常の防止、エネルギー消費の向上でエネルギー恒常性は維持される。
腸内細菌叢による恒常性維持というエネルギー調節機構を明らかにしたが、GPR43を標的に生活習慣病への予防、治療薬に応用できると考えられる。(馬野鈴草)
▼外部リンク
京都大学プレスリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/