AIS発症の機構解明、新規治療法開発へ
理化学研究所は5月13日AIS発症に関わる遺伝子「GPR126」を同定したと発表した。原著はNature Geneticsに掲載される。
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理研統合生命医科学研究センター 骨関節疾患研究チームと慶応義塾大学医学部整形外科脊椎外科研究グループ(松本守雄准教授ら)、京都大学再医科学研究所 等との共同研究グループによる成果。2011年に発見したAISの発症しやすさを決める遺伝子「LBX1」に続き、今回新たな発見となった。
AIS 世界でも2%の発症率
思春期特発性側彎症(AIS:Adolescent Idiopathic Scoliosis)は、日本人の約2%に見られ、原因が特定できない背骨が横に曲がる病気。背骨が10度以上曲がった状態が側彎症とされるが、重度になると装具の着用や外科的手術が必要となり、進行すると治療が困難となる。現在、その発症頻度の高さと社会的重大性から、学校教育現場でも側彎の検診が義務づけられている。
発症関連遺伝子を発見 診断・予測モデルを目指す
発症の背景には遺伝的要因があるとされ、世界でその探索が行われてきた。今回、研究チームでは約2500人の集団について55万個の一塩基多型(SNP)を解析、AISと強い相関を示したいくつかについて別の2万5千人の日本人集団でさらに相関を解析した。その結果、AISと強く相関するSNPがGPR126の遺伝子領域内にあり、ゼブラフィッシュでの実験ではこの遺伝子の機能を阻害することで骨化が遅れることがわかった。このSNPは中国人と欧米人でも相関が確認されている。
この世界初の発見により、今後研究チームでは、ゲノム情報をもとに診断・予測モデルを作成し、AISの病態を詳細に解明し、オーダーメイド治療や新しい治療薬の開発を目指す。(長澤 直)
原著論文:
Ikuyo Kou, et al. “Genetic variants in GPR126 are associated with adolescent idiopathic scoliosis”
Nature Genetics (2013)
▼外部リンク
理化学研究所プレスリリース(研究成果)
http://www.riken.go.jp/pr/press/2013/20130513_1/