更年期障害の辛い症状を和らげるために、ホルモン治療が行われることは、今日ごく当然に行われています。更年期障害の原因は、加齢に伴うエストロゲンというホルモンの低下だとされています。一般的な症状としては、のぼせやほてりといった血管運動性のものの他に、精神的にも不安定になるケースも見られます。
ホルモンの変化が原因のため、治療ではホルモンを使うことが一般的。エストロゲンが単発で用いられたり、エストロゲンとプロゲスチンというホルモンを組み合わせて行われたりします。けれども、エストロゲンとプロゲスチンを併用する療法で、さらに、閉経してから使い始めるまでの期間が短いと、乳がんの罹患リスクと、これに伴う死亡率が上がることが報告されました。
対象は41449人の閉経後の女性。2年以内に乳がんの疑いなどがあった人。ホルモン治療をしていない人は25328人、エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせた人は16121人でした。調査開始から11.3年後、乳がんの診断が下っていた人は2236人。
エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせた人は、ホルモン療法をしていない人よりも0.18%乳がんにかかるリスクがアップしていました。そして、閉経からホルモン治療開始までの期間が短ければ短いほど、後に乳がんと診断されるリスクが高くなっていました。
このような分析結果に至った原因としては、閉経後数年は月経こそみられなくても、まだ身体の中でホルモンの働きが残っている時期であり、この状態でホルモンを外から使うことで、身体の中でのバランスが崩れてしまうのではないかとみられています。
このため、他の方法で対応できる場合は、特に閉経から間もない場合は、エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせずに治療を行ったほうが良いと指摘されています。アメリカで3月末に行われた発表ですが、今後日本の臨床にも影響が及ぶのではないでしょうか。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Estrogen Plus Progestin and Breast Cancer Incidence and Mortality in the Women’s Health Initiative Observational Study
http://jnci.oxfordjournals.org/
NPO法人 女性の健康とメノポーズを考える会
http://www.meno-sg.net/