肥満で自己免疫疾患が発症するメカニズム
東京大学疾患生命工学センターの研究グループは、肥満に伴って発症する糖尿病や動脈硬化に関わるタンパク質AIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)が自己免疫疾患の発症でも重要な役割を持つことをつきとめた。
(画像はWikiコモンズを利用)
自己免疫疾患は体の細胞を攻撃する抗体(自己抗体)ができ、最終的に臓器に炎症が生じて機能が損なわれてしまう疾患だが、肥満に伴う疾患群の一つとされている。たとえば甲状腺機能低下、インスリン分泌不全、不妊症などはいずれも肥満によって発症する。しかしそのメカニズムはわからなかった。
同グループはこれまでに血液中のAIMの量を制御することで肥満の進行を抑え、糖尿病や動脈硬化を抑制する可能性を提示してきた。
AIMの制御で自己免疫疾患を抑制
肥満が進行すると血液中の脂肪酸の増加で免疫細胞は活性化、免疫グロブリンIgMが増加する。これが過剰になると脾臓で自己抗体を作る悪玉の免疫細胞が生み出される。AIMは血中でこのIgMに結合して脾臓で長時間働ける支援をする。すると肥満でIgMが増加してもAIM量が少なければ脾臓でIgMは機能しない。悪玉の免疫細胞は増えないことを実証した。
今回、肥満に伴う自己免疫疾患の発症機序を明らかにし、脂肪を融解する血液中のタンパク質AIMが中心的に働くことを発見した。過度の肥満でも血液中のAIMの量を抑えれば糖尿病などと同じく自己免疫疾患も抑制し得ると示したことから、AIMは肥満に伴う幅広い疾患の統一的な治療のターゲットになると考えられる。(馬野鈴草)
▼外部リンク
東京大学プレスリリース
http://www.m.u-tokyo.ac.jp/