不快感に関わる不快神経
痛みが不快であるのは当然だが、痛みが不快感を起こすメカニズムはこれまで解明されていない。北海道大学の研究グループは痛みによる不快感に関わる不快神経を同定した。
痛みは体の危険を告げる警告信号で、痛みによる不快感が危険を防御し回避する。警告信号後も痛みの続く慢性痛は生活の質を損なう上に、痛みによる不快感が長く続くと、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症し、痛みを悪化させる悪循環が報告されている。疼痛治療には感情的な側面を考え、不快感の神経機構を解明する必要がある。
研究グループは不快な体験をした場所に近づかなくなる動物の習性を利用して、分界条床核という脳の部位でCRFとNPYという2つの神経ペプチドが、痛みの不快感の生起に逆の働きをすることをラットの実験でつきとめた。また、2型神経細胞と呼ばれる神経細胞の活動をCRFは亢進しNPYは抑制すること、分界条床核2型神経細胞が痛みによる不快感に関わる「不快神経」であることを明らかにした。
不快神経と快神経
分界条床核の「不快神経」の活動亢進が「快神経」として働いているドパミン神経の働きを抑制することもわかってきた。「快神経」の抑制で痛みが不快感を引き起こしたり、痛みのために楽しく感じられない、やる気が出ないことが考えられる。
さらに「不快神経」は痛み以外にも、苦み・酸味・悪臭、暑さ・寒さなどの感覚刺激、精神的なストレスなどに反応し、活動の亢進で不快感を引き起こすと考えられる。この神経細胞の活動の異常がうつ病や不安障害に関与するなら、これら疾患の解明、治療薬の開発につながる可能性がある。(馬野鈴草)
▼外部リンク
北海道大学プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/