ストレスが嵩じると、免疫力が低下する、というのは私たちが当たり前のように持っているイメージです。このため、「ストレスを溜めないように」というのは、すでに健康管理の一貫と考えられています。
では、ストレスはなぜ溜めてはいけないのでしょうか?実は、この実際を調べるために、300件以上の精神的なストレスと免疫に関する論文を、再分析した報告があります。
これによると、恐怖感やひどく驚くことなど数分間の急激なストレスは、免疫調整に関して、自然に備わった免疫のレベルを上方修正すると共に、一部の機能については下方修正して、全体としてバランスを取るようになることが分かりました。
学校の試験のような、日常生活上の軽いストレスでは、液性免疫に変化はありませんが、細胞性免疫が抑制される傾向があることが分かりました。
液性免疫の低下は、アレルギー反応など血液、細胞液、リンパ液が関連する病気へのリスクが高まることになりますし、一方、細胞性免疫の低下は、ウィルスやがんなどの細胞レベルでの病気へのリスクが高まることを示します。
慢性的なストレスでは、細胞性免疫、液性免疫両方の抑制が見られました。
身近な人を失ったり、自分自身が傷ついたりすることによる強いストレスでは、そのレベルによって免疫機能への影響が異なります。ただ、これに続くストレスが慢性化すると、先に述べたように細胞性・液性共に免疫が抑制されることになります。
ストレスをためないように、という一般論は、ストレスを慢性化させないという考え方に基づいているのですね。(唐土 ミツル)
▼外部リンク
Psychological Stress and the Human Immune System: A Meta-Analytic Study of 30 Years of Inquiry
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/