柴崎氏は、「医薬品をライフワークとする全ての薬剤師、研究者の総合的な発展が、これからの日本の薬学にとって非常に重要だろうと思っている」と相互連携の必要性を強調。その上で、山中伸弥京大教授のノーベル賞受賞を例に「何とか薬剤師、薬学の若い人の中から第二の山中氏を輩出したい。そのためにもオール薬学で協力し合い、情報交流が密になることによって、これまで以上にすばらしい研究が展開できると思っている」とし、今回の企画をきっかけに連携が進展することを求めた。
児玉氏は今後の高齢化社会の進展により、外科的処置よりも内科的処置、特に薬物療法の位置づけがより一層重要性を増すが、その中でハイリスク薬や高齢者に対するきめ細かな対応が求められると指摘。
現場薬剤師にはより高い資質が必要となるとし、「薬剤師はサイエンティストとしての側面が大事になってきた。例えば、現場ではジェネリック薬普及という重要な役割があるが、その選択に際してエビデンスを持って対応する必要がある」とした。さらに、高齢者の特性に合わせた適正な薬物療法などを念頭に、その実施に向けては「エビデンスを備えたサイエンティストになる必要がある。そのためには大学や研究者、薬学会のサポートが必要」と述べた。
北田氏は「薬学は“物を創る”から“育薬”までのライフサイクルに携わっていく学問だと思う。今まで“創る”と“使う”という間のパイプが十分ではなかった。薬学抜きで薬剤師はあり得ないが、薬剤師が社会的地位を作り、現場での役割が拡大する中で、社会的に評価が上がってくることは、薬学にも波及する。運命共同体だと思っている」とし、基本的に連携が必要との思いを述べた。
薬学会の教育委員会生涯研鑽作業班長の松木則夫東大教授は、同作業班での検討状況を紹介。「薬学教育は一定のレベルを保証するもので、どちらかというと受動的になってしまう。一方、専門薬剤師制度などとは異なり、薬学会が考える生涯研鑽はそれぞれの到達目標も度合いも異なる」とし、学部教育の延長のような内容は想定していないと説明。
「これからは疑問を投げかけてほしい。それに応えるようなシンポジウム、さらに推し進めて共同研究というところまでいければと思う。薬剤師は8割が法律によるルーチンワークだが、残りの1~2割は制約を離れ、自己を高め、ファーマシスト・サイエンティストを目指すことが大切。そのために薬学会を大いに利用してもらいたい。薬学会としても現場のニーズを知りたい」と連携を訴えた。