■若手研究者の経済支援も検討
日本薬学会の柴崎正勝会頭は3月28日、第133年会の講演で、薬学6年課程導入に伴う会員数の減少に歯止めをかけるために日本薬剤師会や日本病院薬剤師会との会員融合を検討する方針を示した。また、基礎薬学研究水準の底上げに向け、同学会が所有する東京・渋谷の長井記念館の賃貸料収入を原資に、6年制・4年制の博士課程院生や博士研究員向けの経済的支援制度を創設したい考えも明らかにした。
現在の同学会会員数は約1万9200人。これまで薬学4年課程から大学院修士課程へ進学して薬学会に入会し、その後、医療に従事して職能団体の会員になる際に退会するケースが多く、入会数と退会数が概ね均衡して2万人程度の規模を維持してきた。しかし、6年課程の場合は薬学会に入会する学生は少なく、薬学会を経ずに薬剤師会、病院薬剤師会へ入会する流れになると見られる。
柴崎氏は「学会の力量、存在価値を示すためには、あるレベルの会員数が必須。不可能かもしれないが現状を維持したい」と強調。対応策として、[1]学術団体と職能団体の会員間の融合の可能性を探る[2]薬学部出身者以外の薬系大学院修士課程への入学希望者の促進[3]製薬会社研究員の薬学会への入会を増やすために米国化学会医薬化学部会を参考に年間のあり方を改善――の三つを挙げた。
このうち職能団体との会員融合については、「非常識と言われる提案かもしれない」とした上で、「簡略化した説明をすると、薬学会の会員が日病薬へ入会を希望する場合、または日薬へ入会を希望する場合、会員費用を変えることなく、(学会と職能団体の)両方に入会できるようにするということ」と語った。
また、「会員数の減少を止める手段であると同時に、薬学発展上のメリットもある」とも指摘し、「創薬の従事者には育薬研究の情報が入り、育薬の従事者には創薬研究の情報が入ってくるようになり、医薬品をライフワークとする人々のレベルアップが必ず実現できる」と述べた。
一方、博士課程院生、博士研究員への経済的支援をめぐっては、「返却する必要のない奨学金として捉えている」と説明した。長井記念館の建設に伴う借入金の返済が3年後に完了する予定で、その後は修繕積立金等を除いても手元に賃貸料収入が残るため、これを原資に充てる構想だ。
5月頃に開く第2回理事会に問題提起して具体的な検討に着手する考えも示し、「もし可能であると結論が出れば、2015年度からの次期会頭の2年目にこの制度が実現できるよう努力をしていく」とした。
このほか、育薬研究を発展させるために、第134年会から既存の「斎藤記念国内賞」を医療現場の薬学研究を表彰する制度として再構築することが決まっていることを紹介した。