神経変性疾患SENDAの原因遺伝子を解明
横浜市立大学、東京大学、群馬大学の共同研究グループはSENDAというまれな脳の病気の原因遺伝子を特定した。細胞内でオートファジー(自食作用)に関わる遺伝子の異常が知的障害を引き起こす可能性が示された。
SENDA(static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood)は脳内に鉄沈着を伴う神経変性症の一つで、小児期早期からの非進行性の知的障害と、成人期に急速に進行する錘体外路症状(ジストニアやパーキンソン様症状)、認知症を呈する。家族歴がないため遺伝学的手法では原因遺伝子が解明されなかった。
今回、ゲノムのタンパク質を決める部分をすべて解析する全エクソーム解析を行って、患者1名ずつ2家系に共通のWDR遺伝子のデノボ変異(患者で起こった新規突然変異)を発見した。また3名の患者と家族にWDR45の変異解析を実施した結果、WDR45遺伝子変異があり、WDR45遺伝子はSENDAの原因遺伝子と考えられた。
WDR45遺伝子の変異がオートファジーに影響
オートファジーは細胞内の不要成分を自ら分解して細胞内恒常性を維持するが、特に神経細胞では異常タンパク質の蓄積を防ぎ神経変性を抑制する。
WDR45遺伝子はオートファジーに必須の酵母Atg18のヒト相同遺伝子、WIPI4タンパク質をコードする。患者のリンパ芽球の解析でWIP14タンパク質の減少、オートファジー活性の低下、オートファゴソームの形成異常が認められた。以上からSENDAがオートファジー遺伝子の変異によってオートファジー機能低下を示す疾患であること、オートファジーの異常と神経変性疾患が関連することが実証された。
今後SENDAや他の神経変性疾患、知的障害の研究を進め、治療法や進行を抑制する方法の開発につながると期待できる。(馬野鈴草)
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