腸上皮細胞が再生する意味は
東京大学と理化学研究所の共同研究グループは、腸がストレスに応答することで体を健常に維持している仕組みをショウジョウバエの実験で解明した。
(wikiペディアより引用)
小腸の上皮細胞は再生が盛んで3~4日で入れ替わる。腸上皮の細胞死に呼応して幹細胞が新たな上皮細胞を再生する。腸は食道を通じて外部環境の刺激にさらされるから、皮膚同様に再生が必要というが、個体における腸上皮再生の重要性はまだ示されていない。
研究グループは細胞死に必須のタンパク質分解酵素カスパーゼを減弱した変異体を作り、細胞死の起きない腸上皮は幹細胞が増えず、腸上皮再生系は破綻していると確認した。一方、腸上皮再生系が破綻しても変異体は野生型と変わらずに成長する。腸上皮細胞の入れ替わりの役割は何なのか。
腸上皮再生系がストレスに応答する
炎症などの組織傷害は体内にストレス応答を引き起こす。腸上皮再生系が破綻した変異体の表皮に創傷を与えて生存率を調べた。野生型の創傷は治癒し個体は生存したが、カスパーゼ活性化変異体は創傷に惰弱とわかった。創傷後の野生型には活性酸素を介したカスパーゼの活性化と細胞死が起きていた。腸上皮のカスパーゼの活性化を抑制した場合、腸幹細胞の増殖を止めた場合も創傷後の生存率が低下した。以上から、ストレスを受けた生体反応には腸上皮の再生が重要と考える。
さらに腸上皮の再生系の破綻が創傷への惰弱、致死を招くのは、体液性因子を介した全身性の反応が原因ではと推測した。野生型または変異型の体液を創傷後に採取しもう一方に注入したら致死性は抑制されるか誘導されるか。結果は、変異体の体液と同様、カスパーゼ活性を抑制した体液でも野生型の生存率は低下した。腸細胞のカスパーゼ活性化を抑制した個体は創傷後の体液中に致死性誘導因子が存在することをつきとめた。
今回の研究は、腸上皮細胞がストレスセンサーとして働き速やかに細胞死を起こすこと、その際に幹細胞の増殖を促して細胞を補充させ、個体の生存を維持することを証明した。(馬野鈴草)
▼外部リンク
東京大学 記者発表
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_250322_j.html