■病院・薬局両薬剤師が対象
日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)は、独自に「外来がん治療認定薬剤師」制度を立ち上げる。病院薬剤師と薬局薬剤師の両者が対象で、早ければ、来年3月の学術大会までには初の認定者を輩出したいと現在、申請資格等の詳細を詰めている。癌治療に対する知識・技術や患者サポート能力を備えた薬剤師を養成していく。
外来化学療法の急速な普及と、分子標的薬や経口抗癌剤の登場などで、癌治療は今や病院内で終結するのではなく、院外での対応が重要になってきている。また、経口抗癌剤は副作用が軽減されたわけではなく、従来の注射剤などと同等の副作用が発生することなど、病院薬剤師ばかりでなく、院外処方箋を取り扱う薬局薬剤師も十分な知識・技術が必要になる。
「外来がん治療認定薬剤師」の趣意は、▽外来癌治療を安全に施行するために薬剤師が担うべき役割を理解し、その知識を習得した薬剤師を養成▽地域癌医療における保険薬局の役割を理解し、患者とその家族をトータルサポートできる薬剤師を養成――すること。
認定薬剤師取得のための申請資格としては、[1]薬剤師の免許を持ち、優れた見識を備えている[2]実務経験が3年以上[3]JASPO会員[4]薬剤師認定制度認証機構が認証している生涯研修認定制度による認定薬剤師などの一定の水準に達している[5]JASPOが認定する癌領域の講習会や研修会を一定単位以上履修している[6]癌患者のサポート経験を10例以上提出[7]JASPOが実施する認定試験(筆記・面接)に合格――などが挙がっているが、詳細は今後の作業を待つことになる。
中長期ビジョンとして、「10年後(2024年)に病院薬剤師1000人程度、薬局薬剤師3000人程度の外来癌治療に精通した学会認定薬剤師の輩出」を掲げている。
遠藤一司理事長(明治薬科大学教授)は、「既に、日本病院薬剤師会や日本医療薬学会の癌専門薬剤師制度はあるが、外来癌治療が普及する中、抗癌剤の副作用軽減やその重篤化の未然防止のためには、十分な知識を習得した上での薬薬連携強化が必要で、そのモデルを作っていきたい。趣意に賛同してもらえる薬剤師の方々に参加してもらいたいと思っている」と独自に制度を創設した背景を語る。
一方、寄付金をもとに、癌研究助成事業も開始する。癌医療に関する薬剤師の臨床研究の裾野を広げることを目的とし、これから臨床研究を積極的に実施する若手研究者が対象。詳細は、学会ホームページに掲載していく。