日本病院薬剤師会の土屋文人副会長は22日、日本医療・病院管理学会の第313例会で講演し、病院で持参薬を使わないという方針は、立派なリスク回避対策との考えを示した。ただ、この場合でも(持参した)服用薬による副作用のチェックなどは必須と指摘。薬剤師の関与のあり方を見直すことが求められるとした。
土屋氏は、様々な医薬品事故防止対策がとられていたとしても、一度受け入れた間違った情報などのエラーが、次の紹介先の医療機関でも引き継がれてしまった医薬品関連医療事故を例に、薬剤に関するITと医療安全について解説した。
各病院で整備する医薬品マスターは、医療安全の面から採用薬に限っているケースが少なくない。このため、入院後も持参薬使用を前提とすれば、持参薬に関わる情報収集が必須となる。土屋氏は患者が予定入院の場合、事前の薬薬連携の中で情報収集をしている事例があるとしながらも、薬剤師が持参薬に関する情報収集や鑑別に大変な時間を費やしていると指摘。
その上で、「(持参薬を)使う場合のコストを考える必要があるのではないか。リスクマネジメントの面からは、むしろ持参薬を使わないという選択は立派なリスク回避対策だ」「DPCでは持参薬使用が大前提となっているが、使うか否かを検討することも必要ではないか」と述べた。
ただ、服用している薬剤により副作用が発生している場合も考えられることから、持参薬の鑑別は必要となるが、薬剤師でなくとも鑑別はできるとも指摘。持参薬使用の必要性の再検討と評価、その評価に基づく処方設計や提案の重要性を強調した。
さらに、一般名処方によって危惧されることとして、▽複数の徐放性製剤が存在する場合、一般名化には無理がある▽配合剤は一般名では処方できない――などを挙げると共に、「通常医師が処方する時点では販売名だが、印刷は一般名となっており、問い合わせの際に一般名では話が通じない。相応の配慮が必要。紹介状に一般名が記載される場合にも同様の配慮が必要」とした。