Siglec-14タンパク質を持つ人と持たない人
理化学研究所と日本医科大学の共同研究グループは慢性閉塞性疾患(COPD)の増悪の起こりやすさに糖鎖を認識するタンパク質Siglec-14 (シグレック14)が関与することを発見した。
COPDは細菌やウイルス感染が引き金となって症状を悪化させる。研究グループは要因の一つ、ヘモフィルス・インフルエンザ菌にSiglec-14タンパク質が接着する点に着目した。このタンパク質は自然免疫細胞の活性化に関わるとされるが、その機能はよくわかっていない。Siglec-14を持たない人は多く日本人では約4人に1人。そこでCOPDの増悪の起こりやすさにSIGLEC14遺伝子の型が影響しているかどうかを検証した。
Siglec-14タンパク質は炎症性の反応が強い
SIGLEC14遺伝子の型には祖先型(Siglec-14タンパク質を作る型)と欠損型(Siglec-14タンパク質を作らない型)があり、両親から欠損型を受け継ぐとSiglec-14タンパク質を持たず、両親の一方から祖先型、もう一方から欠損型を受け継ぐとSiglec-14を持つ。
今回、COPD患者135人のSIGLEC14遺伝子の型を分け、一年間増悪の回数を調べた結果、Siglec-14タンパク質を持たないCOPD患者は持つ患者に比べて、年平均の増悪頻度が4分の1以下だった。
またSiglec-14タンパク質を持つ自然免疫細胞と持たない自然免疫細胞にそれぞれヘモフィルス・インフルエンザ菌で刺激したところ、持つ細胞の炎症性の反応の方が強かった。
以上からSiglec-14タンパク質を持つ場合、炎症性の反応が強いために増悪の頻度が高いという仕組みを明らかにした。今後、Siglec-14タンパク質を起点にした増悪の治療や予防につながることが期待される。(馬野鈴草)
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理化学研究所
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