■横浜開催迫る
日本薬学会第133年会が、松木則夫氏(東京大学大学院薬学系研究科・薬品作用学教授)を組織委員長として、27日から4日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催される。「薬科学の底力」を今大会のメインテーマに掲げた松木氏は、今一度、薬学のサイエンスを中心とした進歩や未来を熱く語れる年会を目指し、「基礎と臨床が相互に切磋琢磨しようという思いを込めた」と、年会開催への思いを語る。
最近の年会は基礎と臨床の融合、あるいは共存という視点、意図がメインテーマに反映されてきたが、既に共存の道は開けてきた。今回は、相互に切磋琢磨しようという思いを込めた――と松木氏。
東京大学主宰による開催が17年ぶりとなり、学部教育6年制が導入された後も、薬科学科学生が9割という状況を反映して、「あえて基礎科学を前面に出し、医療薬学領域においてサイエンス部分を底上げしたいと考えた」という。
そこで新たな試みとして、シンポジウムの枠とは別に「『オール薬学』キックオフ―薬学のさらなる発展をめざして」が企画された。柴崎正勝次期会頭、児玉孝日本薬剤師会会長、北田光一日本病院薬剤師会会長が一堂に登壇・コメントし、その後、薬学会が目指す薬剤師生涯研鑽の方向性の一端を、事例を挙げて紹介するという内容だ。「薬学会の基礎研究能力を活用し、自身の研鑽に役立ててほしいというメッセージを込めた」と語る。
また、若手研究者を対象とした昨年の北海道年会で導入された「優秀発表賞」を継承、今回は事前アナウンスをし、応募を行った。特に一般演題を発表する学生の「やる気」にも配慮した。その結果、一般演題のエントリーは3760題となり、北海道年会をわずかに上回った。優秀発表賞の対象演題を中心に、また会場設営の点も踏まえ、今回の口頭発表は869題に絞られた。
特別講演は10人9演題が予定されている。このうち根岸英一氏(パデュー大学)は2010年のノーベル賞受賞者、山中伸弥氏(京大iPS細胞研究所長)は松木氏が講演依頼後、奇しくもノーベル賞を受賞した。ただ、山中氏は諸般の事情からビデオ講演となるが、その後を同副所長の中畑龍俊氏が引き継いで口演することになっている。
シンポジウム等のセッションは全体で66題だが、このうちテーマ内容等により、一部が教育フォーラム(4題)・FIPフォーラムに整理された。一般シンポジウム55題のほか、日米および日韓国際シンポ、大学院生シンポが2題、高校生シンポ1題が予定されている。
このほか運営上の試みとして、スマートフォンやタブレット端末でもプログラム検索に対応できる仕組みが取り入れられた。松木氏によると既に他学会では、携帯端末の活用が進んでいることもあり、今回の年会に取り入れられた。聞きたい演題や研究者名から検索し、登録することで「マイスケジュール」を作ることができるなど、若手研究者・学生へのアピールも一歩進めた。