DMAT隊員へのアンケート調査を実施
国立病院機構災害医療センター精神科の松岡豊氏らは、東日本大震災の被災地に出動した災害派遣医療チーム(DMAT)隊員へのアンケート調査を実施。その中の9%が放射線被曝を心配しており、回答した隊員は男女ともに心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状が有意に強くなっていた。
このアンケート結果を第23回日本疫学会学術総会(1月24~26日、開催地:大阪府吹田市)で報告。心理的苦痛を軽減するためには、被曝に関する正確な情報提供の必要が有ると示唆した。
救援者は二次受傷者になりやすい。救援者も被災者と同様に、ストレスが強くそのままの状態が続いてしまうため、メンタル面が不安定になってしまう。専門医によると、心理的なストレス反応として起きやすいのは、気分の高ぶり、イライラ、怒り、不安、憂うつ、無力感、自責感などである。そしてさらに強いストレス反応となると、現実感がなくなる、フラッシュバック、感情の麻痺、他人とかかわりたくないなどの状態になってしまう。
それらの症状に加えて、不眠、悪夢、食欲低下などの身体的な変化が起きてしまい仕事に支障が出る、また飲酒量や喫煙量が増えるといった変化が起こりやすい。
(この画像はイメージです)
被曝に対する不安からPTSD症状
今回のアンケートを元にPTSD症状が強く現れる人の特徴を検討した。その結果、救援活動直後の心理的苦痛が大きかった人。そして震災関連テレビ番組の視聴時間が長かった人がPTSD症状が強いということが認められた。
DMAT隊員のアンケート結果からは、「被災地への派遣経験あり」が19.8%、「被災地での遺体接触あり」が11.1%であった。また「放射線被曝への心配あり」は9.2%。震災関連のテレビ番組の視聴時間は、1日当たり1~4時間が68.9%。さらに被曝への心配は男女ともに、抑うつ状態が高かった。
今回の結果から「放射線被曝に関して一般人より知識がある医療者であっても、放射線被曝の心配が心理的苦痛となっている。放射線被曝に関する不確実性は彼らの精神健康にも害を及ぼしている。また「放射線被曝の可能性を有する現場で活動する救援者に対しては、被曝に関しての正確な情報を提供することによって、心理的苦痛を軽減することができる」と述べている。(福田絵美子)
▼外部リンク
DMAT 事務局ホームページ
http://www.dmat.jp