体内時計を制御するCRY
東京大学と九州大学の共同研究グループは体内時計に必須のCRYタンパク質が12時間かけて蓄積し12時間かけて崩壊しながらリズムを刻むメカニズムを発見した。体内リズムの異常から発症する疾患の予防、治療に役立つと期待される。
CRYタンパク質は約24時間で合成、分解による増減を繰り返して睡眠・覚醒リズムやホルモン分泌リズムを生んでいるが、どのように増減して一日のサイクルを終えているかは不明だった。
CRYの安定化に必要なタンパク質2種
今回の研究では、CRYの分解を促進するユビキチン化修飾酵素FBXL3によく似たFBXL21に着目し、CRYの急激な分解を防ぐという役割をつきとめた。
FBXL3とFBXL21の遺伝子を欠損したマウスは行動リズムが徐々に不安定になり、ついには周期的なリズムを消失、ランダムな活動と休息を終日繰り返した。この結果から体内時計を早く進めようとするFBXL3と遅らせようとするFBXL21の競合作用で24時間サイクルが正確に刻まれていることがわかった。
核内にあるFBXL3と細胞質にあるFBXL21は一日の異なる時間帯にCRYタンパク質に作用する。昼に増加したCRYタンパク質はFBXL21の制御で蓄積され、夜にFBXL3の分解制御で減少する。このCRYのタンパク質リズムの形成が体内時計を維持する。
リズム障害が疾患の原因に
体内時計のリズム障害は睡眠障害やうつ病などの精神疾患に関わり、がんやメタボリックシンドロームのリスクを招き、老化で時計の振動が弱くなると言われる。さらにCRYには糖代謝に関与する遺伝子の発現を調節する働きがあり、CRY遺伝子の異常が糖尿病や高血圧の原因になることも報告されている。CRYタンパク質量の制御メカニズムを解明した成果がこれら疾患の治療につながると考えられる。(馬野鈴草)
▼外部リンク
東京大学プレスリリース
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/