シェーグレン症候群を誘導する過剰な細胞死
東北大学、理化学研究所、大阪大学の共同研究グループは自己免疫疾患のシェーグレン症候群の病因を解明した。シェーグレン症候群は目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)が主症状で潜在的患者数は国内に推定数十万人の難病で、原因は明らかにされていない。
これまでの研究で、転写制御因子のIκB-ζ(IカッパB-ゼータ)を欠損するマウスが病原体のいない環境でシェーグレン症候群様の慢性炎症を発症することはわかっていた。今回、このマウスの涙腺にリンパ球の浸潤を伴う炎症があること、涙の分泌量が低下していること、血清中に自己抗体が存在することをつきとめ、シェーグレン症候群に酷似していると確認した。
次に炎症を引き起こす細胞種を特定する過程で、免疫応答に重要なリンパ球が発症に不可欠であるとつきとめた。しかし、正常マウスのリンパ球でも発症したため、リンパ球以外の細胞種の異常を解析した。
その結果、上皮細胞にだけIκB-ζ遺伝子欠損マウスに炎症が発症し涙腺ではアポトーシスという細胞死が過剰に誘導されていたことから、過剰な細胞死が炎症の原因と判断した。アポトーシスを抑制する薬剤を投与したところ、炎症は抑えられ涙の分泌量も回復した。
細胞死を阻害する薬剤に効果
今回の研究で、涙腺上皮細胞においてIκB-ζがアポトーシスを抑制する働きをすること、その欠損でアポトーシスが過剰に誘導されること、過剰なアポトーシスによって異常なリンパ球が発生して炎症の発症にいたることが明らかになった。つまり、慢性炎症は涙腺上皮細胞の過剰な細胞死が原因で、細胞死を阻害する薬剤で治療可能である。
研究グループはこの成果がシェーグレン症候群をはじめとする組織特異的自己免疫疾患の発症機序を解明し、新たな治療の取り組みにつながるものと考えている。(馬野鈴草)
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