炎症を抑える新たな仕組みを発見
アレルギーは患者が人口の3割近くを占める国民的な疾患となっている一方で、アトピー性皮膚炎やぜんそくなど重篤な疾患の病態は十分に解明されていない。東京医科歯科大学の研究グループはこれまでにアレルギーの発症に抗体の一種IgEと白血球の一種の好塩基球が関わっていることを突き止めてきたが、今回の研究では皮膚の炎症部位に集まる多種類の白血球の役割について分析した。その結果、アレルギーを悪化させる細胞(火付け役)がアレルギーを抑える細胞(火消し役)に変身する仕組みがあることを発見した。
炎症を悪化させる細胞から抑える細胞に変換
炎症部位に集まっている白血球を調べると半数近くがマクロファージであり、血中を循環する炎症性単球が皮膚に浸み出して2型マクロファージに分化しているとわかった。
炎症性単球、2型マクロファージともアレルギー炎症の誘導・悪化に関わっていると考えられていたことから、単球が皮膚内に浸潤しない状態にして観察したが、軽快するはずの炎症が重症化・長期化に転じた。そこで炎症性単球を注射してみると、炎症部位に浸み出し2型マクロファージに成熟したのち悪化した炎症が抑えられた。さらに、好塩基球から生じたサイトカインの一種、インターロイキン4(IL-4)が皮膚に浸み出た炎症性単球に作用してマクロファージに変化させていることがわかった。
炎症性単球から生成した2型マクロファージがアレルギー性炎症を抑制した、つまり「アレルギー性炎症を悪化させる細胞(炎症性単球)」が「アレルギー性炎症を抑える細胞(2型マクロファージ)」に変換できることを証明した。変換のメカニズムと2型マクロファージによる炎症抑制の発見が、アレルギー疾患の新たな治療法に展開することが期待される。(馬野鈴草)
▼外部リンク
東京医科歯科大学プレスリリース
http://www.tmd.ac.jp/