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大腸のストレスセンサーの働きが明らかに―潰瘍性大腸炎の解明に可能性

読了時間:約 1分1秒
2013年02月27日 PM08:13

大腸粘膜を保護するムチン

奈良先端科学技術大学、ケンブリッジ大学、群馬大学の共同研究グループが大腸粘膜を保護する粘液ムチンの分泌にIRE1β(アイアールイーワンベータ)が重要な役割を果たしていることを明らかにした。この成果は粘膜がただれる潰瘍性大腸炎の病因解明につながると期待される。

消化管を損傷や細菌感染から保護する粘液が糖タンパク質のムチンでムチンの量や質が低下すると潰瘍性大腸炎やがんを誘発することは知られている。一般的にムチンなど分泌タンパク質は細胞小器官の小胞体に適切に折りたたまれることで機能を発揮する。IRE1βというタンパク質がその折りたたみを監視していると考えられているが、消化管のどの細胞に発現し実際の役割は何かは不明だった。

明らかになったIRE1βの働き

ムチンは粘膜にある杯(さかずき)細胞によって作られて小胞体で形を整えられる。研究グループはIRE1βが腸全体には分布せず、杯細胞の小胞体に特異的に発現することを突き止めた。またIRE1βが構造異常のタンパク質が小胞体に蓄積したことを感知するストレスセンサーの働きをしていることを発見した。 

IRE1βが欠損したマウスの杯細胞では折りたたみに失敗した不良のムチン前駆体が蓄積して小胞体が肥大化していた。過剰なムチンが折りたたみ処理を滞らせ、結果的に消化管を覆うムチンの不足が潰瘍を引き起こしているのではと推測される。

同グループではIRE1βに欠陥をもつ人は潰瘍性大腸炎にり患しやすい可能性があり、疾患の病因解明にIRE1βについて考慮する必要があると考えている。(馬野鈴草)

▼外部リンク

奈良先端科学技術大学院大学
http://www.naist.jp/

 

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