脳の領域間でネットワークを作る
情報通信研究機構未来ICT研究所と九州大学は、脳は起きている時に複数の領域間で情報をやりとりしているが、眠くなると領域間の情報伝達が非効率的になることを明らかにした。
ウトウトしている時に刺激を見落とし素早い反応ができなくなるのは日常的なことだが、脳に入ってくる刺激が同じなのに反応が鈍くなるのはなぜか、その仕組みは証明されていない。まどろみ状態でも脳の一部分は刺激に反応することが知られている。また機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いた最近の研究で、何もしていない安静状態でも複数の脳領域が同期しながら活動しネットワークを作っていることがわかった。このネットワークはいざ刺激が入ってきたときに素早く正確に情報を受け渡しするために重要な役割をしていると考えられる。
まどろみで領域間の情報伝達が変化する
今回の研究ではまどろみ状態での脳ネットワークの変化を計測する実験をおこなった。fMRIと脳波を同時に記録する脳波計測装置で被験者がはっきり目覚めている状態とまどろみ状態を区別した。脳全体を3780ヵ所の領域に分割したのち安静状態ネットワークのつながり方を数値化し、はっきり目覚めている状態とまどろみ状態との情報伝達効率を比較した。
その結果、まどろみ状態で情報伝達効率が低下、特に前頭連合野・頭頂連合野での低下が目立った。まどろみ状態では脳内のネットワークのつながり方が変化して、素早い情報の受け渡しができにくい状態になっていることが明らかになった。
まどろみ状態や睡眠時は生理的に意識が低下しているが、脳の病気による意識の障害と共通するメカニズムがあると考えられる。意識がなくなる原因の解明につながる可能性がある。研究グループは今後深い睡眠やレム睡眠での脳ネットワークを解析する予定だが、今回の知見が居眠り運転やうっかりミスの防止、高次脳機能障害の解明にも応用できると考えている。(馬野鈴草)
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情報通信研究機構
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