厚労省が医療情報ネットワーク基盤検討会に示した報告書案では、医療機関で処方箋を電子的に作成、交付し、薬局での保存が可能となるよう、2005年4月に施行された電子文書法に基づく省令改正を2~3年後をメドに行うと明記。今後、薬局のフリーアクセスを保証するためサービス業者が持つべき機能、多重使用を回避する方策など、処方箋の電子化に伴う課題を実証実験で確認するとした。
厚労省は現在、大分県別府市において、初めてペーパーレスの実運用に近い形で試験的に処方箋を完全電子化する事業を実施している。その課題の検証を進めると同時に、13年度以降もサービス業者が持つべき機能などについて実証を行い、省令改正に向けた方向性をつけたい考え。
その上で、調剤済みの処方箋を3年間保存しなければならないとした薬剤師法第27条の規定を定める省令改正を行い、実施環境の整った地域から順次、電子的に運用できるよう後押ししていく方針だ。
ただ、省令改正に当たっては、電子化した処方箋の運用を開始する地域に対し、▽地域内の医療機関、薬局の体制整備が網羅的である▽記名押印の電子証明に必要な公開鍵基盤(HPKI)が普及している▽患者の求めやシステム障害時を想定し、紙による交付にも対応できる――ことを留意事項に定め、施行通知等で明らかにするとした。
具体的な電子処方箋の流れは、まず病院・診療所で処方箋情報を専用サーバに送信。患者は自由に薬局を選んでICカード等を持って訪問する。薬局は、ICカード等によって本人確認した上で、サーバから処方箋情報を得る。調剤実施後は、その情報をサーバに送信。病院・診療所でそれを受信、参照できるという仕組みが考えられている。
検討会では、石川広己委員(日本医師会常任理事)が「電子化のデメリットも検証し、どう解決されるのかを国民にきちんと開示しなければ前に進めないのではないか」と拙速な議論をけん制。さらに「薬局では、お薬手帳や処方箋の内容、過去の薬歴まで全て見ることができる。それを誰が見ることができるのかを記載しないと、人権問題にも関わる」と懸念を示した。
また、院内処方箋の扱いが抜けていると問題提起。「入院患者から得た服薬情報を、薬薬連携するときにどうするのか、きちんと整理した方が分かりやすいのではないか」と述べた。
次回会合では、この日の委員からの意見を踏まえ、報告書の文案を詰める。