いまだ不明なエボラウイルス粒子の形成メカニズム
北海道大学、ウィスコンシン大学、東京大学の研究グループはエボラウイルス粒子が感染細胞内で形成される過程を追跡することに成功した。エボラウイルスは90%に及ぶ致死率を伴うエボラ出血熱をひきおこす。アフリカ諸国での集団感染やウイルスを利用したバイオテロの可能性から脅威となっているが、有効な予防や治療法がない。
エボラウイルスが細胞に感染するとウイルス遺伝子と遺伝子がコードしているタンパク質が細胞内で大量に合成される。これらがパーツとして集合しウイルス粒子に取り込まれて細胞外へ放出されると考えられている。しかしウイルスの増殖作業には最高度安全実験施設(バイオセーフティレベル4)が必要となるため、ウイルスのライフサイクルに関する基礎的な知見も未解明な点が多い。パーツがどのようなタイミングで細胞内のどこに分布するかを把握することがウイルス粒子の形成メカニズムを理解する鍵となる。
ウイルス粒子の分布パターンの追跡に成功
研究グループは細胞内分布パターンを解析する目的で、無毒化組み換えエボラウイルス(バイオセーフティレベル3で取り扱い可能)を細胞に感染させて共焦点レーザー顕微鏡で観察した。また新しく合成されたウイルス遺伝子に核酸誘導体を取り込ませて標識することで細胞のどこで作られているかを調べた。さらに目的遺伝子を蛍光標識して細胞内の局在を検出する手法でウイルス遺伝子の細胞内分布を解析した。その結果、ウイルス遺伝子および各種ウイルスタンパク質の感染細胞における分布パターンの追跡に成功した。
今回の研究はウイルス粒子のメカニズムを理解するために新たな知見となる。また、エボラウイルスはウイルス粒子を作るときに人間の細胞のさまざまな仕組みを利用していると考えられるがまだ明らかになっていない。今後はウイルス粒子の形成において細胞の仕組みがどのように関与するかを解明していくという。(馬野鈴草)
▼外部リンク
北海道大学プレスリリース
http://www.hokudai.ac.jp/