発達障害児の読字能力
金沢大学の研究グループが産学連携で開発した幼児用脳磁計(MEG)を用いて広汎性発達障害児の優れた能力に右脳のネットワークが関わっていることを解明した。
健常に発達している幼児(5~7歳)26人と広汎性発達障害児童26人を対象に幼児用脳磁計で脳内ネットワークを検査した。その結果、広汎性発達障害児童の高い読字能力を示す群で脳の右半球後方のネットワークがガンマ波(周波数約30Hz以上の神経活動による振動。視覚を含む脳の情報処理に関与)を介して強くつながっていることを突き止めた。健常に発達している幼児にはこの現象が認められないため、広汎性発達障害に固有の生理学的指標と考えられる。
言葉の意味を理解することは苦手だが目で見たことや文字の理解が優れている発達障害児の場合、すでに幼少期(5~7歳)でこの能力が表れていることから先天的な脳機能に由来する可能性があり、特に文字を読む能力は脳右半球の後方部(頭頂-側頭-後頭)のネットワークの高さに関係することがわかった。
幼児用MEGによる脳機能評価
今回活用した幼児用脳磁計(Magnetoencephalography: MEG)は超電導センサー技術(SQUID磁束計)で脳の微弱な磁場を頭皮上から計測、解析する装置。同研究グループが平成20年に幼児用に開発したもので、幼児の頭のサイズに合わせたヘルメット状の部分に5分間頭部を入れるだけで、脳の神経活動を高感度に記録する。
放射線を使わず狭い空間に入ることなく検査が実施できるため、難しかった幼児期の脳活動のデータが取れるようになった。幼児の複雑な脳機能発達と知的能力について客観的に評価する方法として期待されている。(馬野鈴草)
▼外部リンク
金沢大学プレスリリース
http://www.kanazawa-u.ac.jp/