人工ウイルス殻を構築
鳥取大学と九州大学の研究グループが化学合成したペプチドから組み上げた人工ウイルス殻の内部電荷を解明し、陰イオン性の色素やDNAを内包することに成功した。
球状の植物ウイルスから遺伝子を除いた殻(キャプシド)構造をナノ物質の反応器や運び手として利用する研究が国内外で盛んに行われている。例えばササゲクロロティックモットルウイルスからRNAを除去したキャプシドにタンパク質や医薬品を内包した例が報告されている。
同研究グループは2010年に植物ウイルス由来のペプチドを化学合成しそれらが水中で自己集合して中空のカプセル(人工ウイルス殻)を形成することを発見した。これは従来のレディメイド(出来合い)に対してウイルスキャプシド構造を化学合成によって構築したテーラーメイドといえる成果だったが、このウイルス殻の内部構造が解明されず、デリバリー材料とするには至らなかった。
ウイルス殻の内部電荷を解明
人工ウイルス殻の内部構造を解明するために、表面電位のpH依存性を測定したところ内部が陽イオン性(+電荷が多い状態)とわかり、陰イオン(-電荷)の分子が内包できることをつきとめた。さらにウラニン、ANSなどの陰イオン性の色素分子がカプセル構造に影響を与えることなく内包され、またDNAが凝縮されてウイルス殻内部に内包されたことも確認した。
人工ウイルス殻は簡単なペプチドで構築できるので、さまざまな機能性ウイルスキャプシドの作成が可能となる。今後、医薬品や遺伝子のデリバリー材料としての応用が期待される。(馬野鈴草)
▼外部リンク
鳥取大学プレスリリース
http://www.cjrd.tottori-u.ac.jp/